戦艦の処分
港町はボサセという名前らしい。人々の生活はそれなりに豊かなようだ。着ている服もオシャレな服が多い。店もそれなりにたくさんあった。だが、何か違和感を感じる。恐らく、人族しかいないからだろう。
「ケン。みんなオシャレだにゃ。」
「そうでもないよ。あっちを見てごらん。」
「ホントだ。ケン兄。あの人達は何だろうね。」
そこにはぼろぼろの服を着て、戦艦に物資を運んでいる男達がいた。ルミエルが言っていたが、帝国は実力主義の国だ。恐らく、下層に位置する人々なのだろう。
“リン。あの戦艦の動力は何だと思う。”
“恐らく魔石でしょう。”
“あれだけ大きな船を動かすには、相当な魔石が必要なんだろうな?”
“はい。この大陸にも魔鉱石が採掘できる鉱山があるのだと思われます。”
“あの戦艦を不能にするにはどうすればいい?”
“いくつか方法があります。戦艦ごと破壊するか、魔石を破壊するか、戦艦を亜空間に取り込んで分解してしまうか、どれでも可能です。”
“飛行船はどこにあるんだ?”
“飛行船は帝国の首都近郊にあると思われます。“
“ありがとう。”
“報告ですが、やはりこの国の皇帝ブルータスは転生者です。マスターのいた地球の軍人だったようです。”
“また、情報が入ったら教えてくれ。”
“はい。”
オレ達は情報収集をするため、労働者が多くいそうな食堂に入った。注文して待っていると、周りの人々の話声が聞こえてくる。声が小さいので、オレは魔法を使って話の内容を聞くことにした。
「聞いたか? ルミエル伯爵達が捕虜になったんだってよ。」
「まさか、帝国軍が負けたのか?」
「ああ、そうらしいぜ。」
「それでか? 軍艦や飛行船が帰ってきたのは。」
「多分な。」
「皇帝陛下はどうするんだ?」
「また、軍隊を編成して乗り込むだろうな。」
「おいおい、また税金を取られるのか?」
「仕方ないだろう。」
☆☆☆☆☆
その頃、皇帝ブルータスの城では、今後の作戦会議が行われていた。
「諸君。ルミエル伯爵が竜人族の捕虜にされたのは知っているだろう。何やら不可思議な魔法を使う者が現れたと報告が入った。」
「皇帝陛下。不可思議な魔法とはどのようなものですかな?」
「我が国の戦車や高射砲がすべて黒い雨に溶かされたそうだ。」
「なんと?! そのような魔法が?!」
「恐れることはない。ゲイリー公爵。私が開発した “樹脂” でコーティングすれば溶かされることはない。どうやら金属類だけを溶かすようだからな。」
「皇帝陛下にお伺いしたいのですが?」
「なんだ? ザハト侯爵。」
「戦艦はどうしますか?」
「先ほど私は金属類を溶かすといっただろう。ならば、すべての武器に樹脂でコーティングするに決まっておろう!」
「ハッ! 失礼いたしました。」
「まぁ、良い。下層階級の人員を動員しろ。良いな。ダット伯爵。」
「畏まりました。早急に手配いたします。」
「さて、サンドル軍務卿。戦車と高射砲は現在何台残っている?」
「戦車は300。高射砲は100ほど残っています。」
「そうか。今後の方針を発表する。1か月以内に竜人族を殲滅する。その次は、ユーラシ大陸の国々を占領するのだ。人族は恐怖により支配し、そして、獣人族、エルフ族、ドワーフ族は奴隷にする。良いな!」
「ハッ」
会議が終了した後、ブルータス皇帝は自分の部屋に戻った。皇帝の部屋には誰も入ることが許されない。部屋に入ったブルータス皇帝は静かに瞑想している。周りにはそう見えたことだろう。
『何ようだ? ブルータスよ。』
『はい。この世界に強力な魔法を使う者が現れました。何かご存じないでしょうか?』
『どうせ管理神エリーヌが、異世界から連れてきたのだろう。』
『よろしいのですか? あなた様の計画に支障が出るのではありませんか?』
『問題ない。お前の知識と私の力があれば、必ずや計画は実現できる。』
『私が受けた恩を必ずお返しします。』
『期待しているぞ!』
『ハッ』
☆☆☆☆☆
夕暮れになった。本来真っ暗な夜も街灯で薄明るい。
「ケン。どうするにゃ?」
「戦艦に忍び込むさ。」
「ケン。無茶よ。」
「大丈夫さ。」
オレは亜空間で作ったマントを3人に渡した。
「これはなんにゃ?」
「これはみんなの姿を隠す道具さ。」
「え~! これ便利! さすがケン兄!」
オレ達は戦艦の中に潜入し、中にいる人々をロープで縛って一か所に集めた。そして、下層の人々が運んでいた食料をすべて空間収納に入れ、一か所に集めた人々を竜人の里に転移させた。竜人の里では、転移させた人々を、ルミエル達元帝国軍人の人々と、ダンテをはじめとする竜人族の人々が対処してくれている。そして10隻すべての軍艦で作業が終わった。
「ケン。この後どうするの?」
「この戦艦を使えなくするのさ。こんなものがあったら世界の秩序が壊れるからね。」
「ケン兄。どうやって使えなくするの? また溶かすの?」
「いいや。これだけ大きいと溶けるのにも時間がかかるし、時間がもったいないから違う方法でやるよ。」
オレは両手を広げて時空魔法を発動する。
『ブラックホール』
すると、暗闇の空に真っ黒な穴が開いた。巨大な戦艦が次々とその黒い渦の中に飲み込まれていく。
「ケン。凄いにゃ。あれはなんにゃ?」
「すべてを吸い込んで粉々にしてくれる穴さ。」
「ケンは本当にすごいにゃ。」
「さあ、今日はこの辺にして家に帰ろうか。」
「うん。」




