「無能」と追放された最強聖女、素性を隠した青年と恋に落ち極上の幸せを掴む
ハーツウェル公爵家の輝かしい大広間は、幾千の魔導蝋燭が放つ黄金色の光で満たされていた。
天井には繊細なフレスコ画が描かれ、極上のヴィオロンが奏でる旋律と、クリスタルグラスの上で静かに弾ける泡の音が交わる。王宮の夜会にも勝るとも劣らない、完璧で優雅な夜景――しかしその華やかさは、たった一言の発声によって、凍りつくような死の静寂へと変貌した。
「マリン・ハーツウェル! 貴様との婚約を、本日この場を以て破棄する!」
大広間の中央、一段高い壇上から響き渡ったのは、帝国第一王子エトリック・スウィームの朗々とした声だった。その傍らには、可憐な桃色のドレスを身に纏い、怯えたように袖を握りしめながらも、瞳の奥に確かな歪んだ歓喜を宿した少女――アーリィ・グレイが寄り添っていた。
マリンは、ただ静かにその場に立ち尽くしていた。 頭上に揺れる光を受け、まるで月光を練り上げたかのように美しく輝く純白の髪。代々「聖なる魔力」を色濃く受け継ぐハーツウェル公爵家に生まれ、帝国に5人存在する聖女の中でも群を抜いて絶大な魔力を持つ少女。彼女と第一王子エトリックの婚約は、マリンが産声を上げたその瞬間に、両家の誓いとして固く結ばれたものだった。
マリンは自らの運命を受け入れ、幼少期から過酷な日々に身を投じてきた。 「将来の王妃」としての完璧な作法や政治学を叩き込まれる傍ら、聖女としての重責を一身に背負った。魔獣の侵攻から幾千の街を守る巨大結界の維持、戦場で瀕死の重傷を負った兵士たちの治療、さらには難病を治すための新たな薬草処方の開発……。
それらはすべて、過酷な魔力消費と精神の磨耗を伴う作業だった。 自分の体を慈しむ時間などなかった。深夜まで書物に没頭し、吐血しそうなほどの魔力枯渇に耐え、己の体調を省みることなく貢献し続けたのは、ただ「帝国の民の笑顔を守りたい」という無垢な真心と、婚約者であるエトリックの支えになりたいという一心からだった。
それなのに――。
「エトリック殿下……それは、どういうことにございますか?」
マリンの声は小さく震えていた。エトリックは憎悪に満ちた目で彼女を見下し、吐き捨てるように言い放つ。
「とぼけるな! 聖女の責務をアーリィに押し付け、己は公爵家の威光に甘えて陰で怠惰を貪っていた悪行、すべて露見しているのだぞ!」
あまりの不条理な言葉に、息が止まりそうになる。
「な……何をおっしゃっているのですか? 結界の再構築も、今週の治療院の巡回も、すべて私が――」
「だまれ!」
エトリックはマリンの言葉を遮り、アーリィの肩を優しく抱き寄せた。アーリィは瞳から大粒の涙をこぼしながら、胸のすくような演技を披露する。
「マリン様……もう嘘はおやめください……。マリン様は本当は魔法があまりお使いになれず、いつも私に『公爵家の力で揉み消してあるから』と仕事を押し付けていらっしゃいました……。私、マリン様のお役に立ちたくて必死に耐えてきましたが……最近は魔力が限界を迎えて、体調を崩すようになってしまって……っ」
大広間にどよめきが広がった。 すべては真逆だった。魔法の才能に恵まれず、簡単な生活魔法すらおぼつかないアーリィは、マリンが夜を徹して作成した結界の札や治療薬の成果を横取りし、さも自分が執り行なったかのように周囲へ触れ回っていたのだ。マリンが過労で倒れそうになっている姿を見ては、「私のおかげでマリン様も休めてよかった」とすり替えていた。
エトリック王子は、老齢の国王と王妃が長い不妊の末にようやく授かった、かけがえのない一人息子だった。過保護に育てられた彼は直感と感情でしか物事を見ず、愛らしいアーリィの甘い言葉を疑うことなく鵜呑みにした。そして、その不完全な報告を受けた国王夫妻もまた、愛息の主張を全面的に信じ込み、即座にこの婚約破棄を国家の決定として承認してしまったのだ。
「国を惑わし、健気な真の聖女を傷つけた偽りの女など、我がスウィーム王家に掲げるわけにはいかぬ。ハーツウェル公爵家も、このような娘を育てた責任を痛感するがいい!」
国王の冷徹な声が響き渡る。 昨日まで「帝国の宝」「慈愛の聖女」とマリンを持ち上げていた貴族たちが、一瞬にして掌を返した。 「なんて浅ましい女だ」「公爵家の面汚しめ」「アーリィ様こそが真の聖女だ」
……悪意に満ちた囁きが、鋭い刃となってマリンの胸を突き刺す。
血を吐く思いで捧げてきた自分の青春、身を削って守ってきた民への愛、そのすべてが、たった一夜の滑稽な欺瞞によって泥の中に踏みにじられた。真実を訴えようにも、声が出ない。絶望の重圧が、マリンの喉を固く締め上げていた。
城を追い出され、雨の降りしきる夜の街へ出たマリンを待っていたのは、ハーツウェル公爵――最愛の父と母の温かな手だった。 屋敷の馬車の中で、父は濡れたマリンの肩に深く上着をかけ、その小さな体を抱きしめた。
「マリン……よく耐えましたね。悔しかったでしょう、苦しかったでしょう。……私たちは知っています。お前が誰よりも働き、指先を血で染めながら人々を救っていたことを」
「お父様……お母様……私、私、何も怠けてなんて……っ」
「分かっています、分かっていますとも」
母もまた涙を流し、マリンの白髪を優しく撫でた。
「スウィーム王家は愚かな選択をしました。ですがマリン、お前の人生はお前のものです。もう誰かのために命を削る必要はありません。一度すべてを捨てて、お前の望むように自由に生きなさい」
公爵家はマリンの傷ついた心を察し、帝国の目から逃れられる郊外の小さな別荘へと彼女を匿う準備を整えた。
そして「これからの人生で何一つ不自由しないように」と、山のような上質なドレスや貴重な宝飾品を持たせ、惜しみない愛情と共にマリンを送り出してくれたのだ。
――けれど、マリンの心は完全に壊れていた。 静かな別荘についたマリンは、鏡に映る自分の姿を見つめた。
(私は……これまで何のために生きてきたのだろう。私の捧げた時間は、全部無意味だったのかな……)
聖女としての信頼を失い、世間から「偽物」と蔑まれる恐怖と虚無感。どん底の闇の中で、マリンはある決意を固める。
(この輝かしい名前も、高貴な立場も……全部捨てよう)
彼女は公爵家から贈られた豪華なドレスを脱ぎ捨てた。両親の愛には感謝しつつも、自分の足で立ち直るため、持たされたドレスや宝飾品の大部分を密かに街の質屋で金貨に変えた。そして、手に入れた最低限の生活資金を小さな革袋に詰めると、どこにでもいるような質素な綿のワンピースに身を包み、たった一人で庶民の活気あふれる中央街へと踏み出したのだった。
そこは、王宮の冷たく澄ました空気とはまるで異なる世界だった。 焼きたてのパンの香ばしい匂い、威勢のいい店主たちの呼び込み声、子どもたちの無邪気な歓声。 マリンの透き通るような白髪は、質素な街並みの中でも異常なほどに目を引いた。通りすがる人々が「なんと美しい髪だ」「どこかの高貴なお嬢様か?」と振り返り、囁き合う。しかし、泥の跳ねた安物の靴と素朴な服を見た人々は、「まさか、貴族様がこんな汚れた街に来るはずがない」「よく似た綺麗な町娘だろう」と苦笑し、すぐに興味を失っていった。
マリンはその雑多な喧騒の中で、生まれて初めて「ただの人間」として息をした。 屋台で買った安価な果実甘味を口に含み、その甘さに目を細める。誰かのために命を燃やすのではなく、自分のために歩く時間。傷ついた心が、少しずつ温かな日常に溶かされていくようだった。
だが、平民としての自由には、庇護のない危険が隣り合わせであることをマリンは知らなかった。
日暮れ時、市場の余韻に浸りながら一本裏の狭い路地に入り込んだ瞬間――前後の空間が歪み、複数の凶悪な影が立ち塞がった。 どれほど質素な服を纏おうと、公爵家で慈しまれた極上の肌の艶、絵画のように整った顔立ち、そして気品あふれる佇まいは、悪辣な盗賊たちの野卑な欲望を刺激するには十分すぎたのだ。
「へへへ、上等なタマが紛れ込んできたじゃねえか。なんだその髪は? 珍しい色だ、遊郭に売れば跳ね上がるぜ」
「来ないで……っ! 近寄らないでください!」
ナイフの刃先が、夕闇の中で鈍く光る。 逃げ出そうと足を動かそうとするが、恐怖で膝が激しく震え、地面に崩れ落ちてしまう。咄嗟に結界魔法を詠唱しようと体内の魔力を練り上げようとしたが、長年の過労と心の傷によって、マリンの魔力回路は完全に枯渇していた。一筋の光すら生み出せない。
「誰も来やしねえよ。大人しくしな!」
汚れた手がマリンの華奢な腕を掴もうと伸びてくる。
(ああ……私には、やっぱり何も残っていない。誰かを救っても報われず、最後はこんな暗い路地で惨めに終わるんだ……)
絶望が視界を黒く塗りつぶし、死を覚悟して深く目を閉じた、その時――。
「――そこまでだ。薄汚い手で彼女に触れるな」
静寂を切り裂いたのは、低く、しかし凛として通り通った、氷のように涼やかな青年声だった。
直後、激しい突風が路地を駆け抜けた。刃が交わる金属音すらなく、ただドスッという重い衝撃音が連続して響く。マリンが恐る恐る目を開けると、先ほどまで自分を追い詰めていた大柄な男たちが、誰一人として反撃の暇すら与えられず、無様に地面へ転がっていた。
その惨状の中心に、一人の青年が立っていた。
沈みゆく夕陽を受け、黄金色に輝く美しい髪。吸い込まれそうなほど深く、知的な紺碧の瞳。一目見ただけで誰もが息をのむほどに整った容姿を持ちながら、その全身からは尋常ではない気品と、圧倒的な強者の余裕が滲みでていた。
青年は手にした剣を鞘に納めると、怯えるマリンの前で静かに膝をついた。 そして、泥に汚れた彼女の小さな手を、包み込むように優しく握りしめる。
「怪我はありませんか? ……怖かったですね。もう大丈夫ですよ」
青年の掌から伝わってくる、温かく穏やかな体温。その瞳に映っていたのは、蔑みでも、利用しようとする欲望でもなく――ただマリンという一人の存在を心から案じる、純粋な慈愛だった。
その温もりが触れた瞬間、マリンの中で張り詰めていた糸がプツリと切れた。 偽りの聖女として辱められた屈辱、愛した国に捨てられた悲しみ、誰にも届かなかった叫び――胸の奥底に溜め込まれていたすべての絶望が、涙となって目から溢れ出した。
「あ……あぁ……っ、ありがとう、ございます……っ、うあぁぁ……っ!」
子供のように声を上げて泣きじゃくるマリンを、青年は嫌な顔ひとつせず、ただ優しく、壊れ物を扱うかのようにしっかりと抱きしめた。冷たい雨のような悲しみの中で、彼の胸の温もりだけが、マリンの凍りついた世界を溶かしていく。
マリンの運命を大きく変えることになる男との出会いであり、二人の止まっていた時が動き出した瞬間だった。
「泣いても大丈夫ですよ。ここでは、誰もあなたを責めたりしませんから」
レンの包み込むような腕の中で、マリンは声を殺して泣き続けた。 冷たい路地裏の地面。湿った空気と泥の匂い。けれど、マリンを包むレンの胸からは、まるで陽だまりのような温もりが漂っていた。
どれほどの間、そうして泣いていたのだろう。 胸の奥に溜まっていた泥のような漆黒の感情――婚約破棄の屈辱、信じていた民からの罵倒、己の存在意義を見失った絶望――それらが涙とともに体外へ流れ出ていくようだった。
「……すみません。私……見ず知らずのあなたに、こんな……」
マリンが恐縮して体を引こうとすると、レンは優しく、しかし確固たる力で彼女の肩を支え、ゆっくりと立たせてくれた。
「謝る必要なんてありません。怪我がないようで本当によかった。……ずいぶん酷い目に遭われたのですね。顔色がとても悪いです。温かいものでも飲みに行きませんか? 私の知っている、静かで居心地の良いカフェがあるんです」
レンの言葉は、傷ついたマリンの心にそっと寄り添うように穏やかだった。マリンは戸惑いながらも、彼のまっすぐな澄んだ瞳から目を逸らすことができず、小さく頷いた。
案内されたのは、路地裏の奥深くにひっそりと佇む小さな木造のカフェだった。 店内に入ると、珈琲豆の香ばしい香りと暖炉の温もりが二人を迎えた。差し出された湯気の立つホットミルクを両手で包み込むと、じんわりと手のひらから温もりが伝わり、強張っていた全身の緊張が解けていく。
「私はレンと申します。旅の者ですが、しばらくこの街に滞在しているんです。あなたは……?」
「私は……マリン、と申します」
公爵家の名も、聖女の称号も出さない。
ただの「マリン」。 レンはその名を聞くと、愛おしそうに何度も頷いた。
「マリンさん。とても素敵な名前ですね。透き通るようなその髪の毛と同じくらい、綺麗な名前だ」
今までマリンの白髪は、「聖女の証」として重々しく扱われるか、「貴族ににた平民の街にいる人」として好奇の目に晒されるかのどちらかだった。だが、レンの口から発せられた言葉には、純粋な賛美と好意だけが含まれていた。
それからというもの、二人の「逢瀬」は一度や二度では終わらなかった。 一日おき、いや、毎日のように二人は街のあちこちで待ち合わせを重ねた。
ある日は、朝早くから開く賑やかな市場へ出かけた。
「マリンさん、このリンゴ、すごく甘そうですよ」
「ふふ、本当ですね。レンさん、こっちの焼きたてのパンも美味しそうです!」
二人で顔を寄せ合い、銅貨数枚を出し合って買った焼きたての硬いパンを割り分ける。貴族の晩餐会に出される最高級の肉料理よりも、レンと笑い合いながら青空の下で噛み締めるパンの方が、何百倍も美味しく感じられた。
またある日は、街外れの古い図書館のベンチで、一冊の冒険小説を二人で並んで読んだ。 肩が触れ合うほどの距離感に、マリンの心臓は早鐘のように鳴り響く。レンがページをめくるたび、彼の指先や横顔に見とれてしまい、物語の内容など頭に入ってこなかった。
さらに別の日には、大雨が降って小さな雨宿りの小屋に閉じ込められた。 薄暗い小屋の中、落雷の音に身体を震わせるマリンを、レンはそっと自分の上着で包み込んでくれた。
「大丈夫ですよ、マリンさん。私がついていますから」 その言葉と、彼から漂う優しい香りに包まれながら、マリンは自分が「守られている」という激しい幸福感に胸を震わせた。
かつてのマリンの日常は、いつも守られるではなく守るだった。「死に瀕した患者の悲鳴」か「貴族たちの謀略の囁き」、あるいは「エトリック王子の不満」で満ちていた。自分の意見など求められたこともなく、ただ与えられた完璧な回答を口にするだけの存在だった。
だが、レンと過ごす無数の時間の中で、世界は色鮮やかに変わっていった。
「マリンさんはどう思いますか?」
「マリンさんは何が好きですか?」
彼と何度も何度も逢瀬を重ね、他愛もない会話を交わすうちに、マリンは自分が「一人の人間」として扱われていることを知った。
ある日の夕暮れ、小高い丘の上で並んで夕日を眺めていた時のことだ。
「……レンさん」
「はい?」
「私、昔……すごく悲しいことがあって。自分が生きてきた理由も、全部偽物だったんじゃないかって……誰からも必要とされていないんじゃないかって、ずっと暗闇の中にいたんです」
マリンはぽつりぽつりと、自分の過去をぼかしたまま胸の内を明かした。
「でも……レンさんと出会って、何度もこうしてお話して、一緒に笑って……それだけのことが、こんなに温かいなんて知りませんでした。私、生きていてよかったんだって、初めて思えたんです」
マリンの瞳から、一筋の綺麗な涙がこぼれ落ちた。絶望の涙ではなく、凍りついた心が完全に溶けた温かな涙だった。
レンは静かにマリンに向き合うと、指先で優しくその涙を拭った。彼の表情には、胸が締め付けられるほどの深い情愛が滲み出ていた。
「マリンさん。あなたの過去に何があったのか、私にはすべては分からないかもしれない。けれど……これだけは誓います。私は、いま目の前にいるあなたが必要なんです。あなたのその優しい心も、美しい瞳も、私にとって何よりも価値がある」
「レンさん……」
「もう、二度と自分を偽物だなんて思わないでください。あなたは世界で一番、尊く美しい人だ」
レンの言葉が、マリンの胸の奥深くに響き渡る。 もう二度と誰も愛さない。裏切られるのが怖いから、心を閉ざして生きていく。そう決めていたはずだった。 けれど、レンの深い眼差しに見つめられるたび、胸の奥が甘く痛む。彼となら、新しく始める平民としての人生を、心から愛していける――そう確信したマリンは、過去の聖女の立場を完全に捨てる決意をしたのだった。
ハーツウェル公爵に手紙を送り、正式に聖女の辞任と公爵家からの自立を告げた。父は寂しがりながらも彼女の選択を尊重し、一生困らないほどの豪華な衣類や宝飾品を別荘に持たせてくれた。だがマリンは本当の平民として生きていくため、それらの多くを密かに質屋で金貨に変え、小さなアパートで慎ましく暮らし始めた。
レンとの日々は、どこまでも愛おしく、永遠に続くものだと信じていた。
「マリンさん、明日は少し足を伸ばして、少し遠くの綺麗な湖を見に行きませんか?」
「はい! すごく楽しみです、レンさん!」
夕暮れ時、マリンの小さな部屋の前でそう約束を交わし、二人は愛おしそうに手をつなぎ、名残惜しそうに微笑み合って別れた。それが、いつもの幸せな日常のはずだった。
――しかし。
次の日、約束の時間になっても、待ち合わせ場所にレンは現れなかった。
一日。二日。一週間……。 どれほど待っても、どれほど街中を探し回っても、レンがマリンの前に姿を見せることは二度となかった。
彼がいつも泊まっていたはずの宿屋を訪ねても、「急に大きな荷物をまとめて、昨夜のうちに発たれましたよ」と言われるだけだった。
(どうして……? 私、何か気に障ることをしてしまったのかな……それとも、やっぱり私は……また捨てられたの……?)
冷めきった部屋の隅で、膝を抱えたマリンの身体が激しく震える。 何度も重ねた逢瀬の記憶、温かなレンの手のぬくもり、優しい囁き……そのすべてが幻だったかのように消え去ってしまった。平民として生きる希望を与えてくれた人が、理由も告げずに消えた絶望。 胸が引きちぎれるような寂しさと悲しみに、マリンは一人、暗闇の中で再び涙を流すのだった。
レンが消えてから、三ヶ月の月日が流れた。
マリンの暮らす小さなアパートには、凍りつくような静寂だけが満ちていた。 毎日、朝起きては街に出て、無意識のうちにレンと巡った思い出の場所へと足を運んでしまう。二人で分け合った焼きたてのパンを売る市場、雷雨の日に身を寄せ合った小さな雨宿りの小屋、そして夕日を眺めながら互いの温もりを感じた小高い丘――。
どこを歩いても、脳裏に鮮明に浮かぶのはレンの穏やかな笑顔と、あの温かな手触りだった。
(レンさん……どうして……? 私、また一人になっちゃったよ……)
手元に残されたのは、彼と過ごした眩いほどに愛おしい記憶と、公爵家から持たされた高級な衣服を質に入れて手に入れたわずかな金貨だけ。聖女としての立場を捨て、完全に平民として生きる道を選んだマリンだったが、心の唯一の支えであったレンを失った今、世界は再び色を失い、深い暗闇へと沈み込んでいた。
それでもマリンは、彼が残してくれた「自分を大切にしてほしい」という言葉だけを胸に、身を切るような寂しさに耐えていた。
季節が冬へと差し掛かり、冷たい寒風が街を吹き抜ける、ある晴れた午後のことだった。
マリンが古いアパートの前に立ち、小さく息を吐き出すと、白い吐息が空へと消えていく。その時――遠くから、地面を揺らす重厚で洗練された馬の蹄の音が響いてきた。
カツン、カツン、と規則正しく鳴り響くその足音は、質素な庶民街にはおよそ似つかわしくない、途方もない圧倒的な威厳を纏っていた。街を行き交う人々が足を止め、何事かと驚愕の声を上げる。
現れたのは、誰も見たことがないほど豪華絢爛な馬車だった。 深みのある綺麗な群青色に塗られた車体には、純金の細密な意匠が施され、毛並みの揃った四頭の美しい白馬が優雅に歩を進めている。その側面に輝いていたのは、巨大な大国として知られる隣国「アーツ王国」の王家紋章――双頭の鷲の黄金紋であった。
「な、なんだあの馬車は……!? 貴族様どころじゃないぞ!」
「アーツ王国の紋章じゃないか! なぜこんな場末の平民街に……!?」
街中が騒然とする中、その美麗な馬車は、あろうことかマリンの佇む古いアパートの真前で静かに停車した。
マリンは息を呑み、思わず後ずさりした。自分にはもう関係のない、遠い高貴な世界。また自分から何かを奪おうとする理不尽が訪れたのかと、胸が激しく脈打つ。
やがて、重厚な馬車の扉が静かに開かれた。 白い手袋を嵌めた御手の従者が扉を押し開き、中から一人の男が降り立ってくる。
漆黒の上質なシルク仕立ての夜会服を纏い、胸元には蒼い宝石が輝く勲章。洗練された立ち振る舞い、そして一国の主のごとき気品と威厳に満ちた佇まい。 しかし――その顔を見上げた瞬間、マリンの思考は完全に停止した。
陽光を受けて眩しく輝く黄金色の髪。吸い込まれそうなほど深い、知的な紺碧の瞳。 そして、世界中でただ一人だけがマリンに向ける、あの痛いほどの愛おしさを込めた眼差し。
「……レン……さん……?」
声が震えた。夢を見ているのではないかと、己の目を何度も疑った。 身に纏う衣服はかつての質素な旅装束ではなく、一国の王族そのものの絢爛豪華な衣装。だが、その息をのむほど整った顔立ち、立ち昇る温かな雰囲気は間違いなく、マリンが夜も眠れぬほど愛し、恋焦がれた青年――レンだった。
レンは、騒然とする街の人々の視線など意にも留めず、まっすぐにマリンへと歩み寄ってきた。 そして、泥に汚れたアパートの前で、ためらうことなく片膝をついたのだった。高価な衣装の裾が泥に触れることすら一切気にせず、真摯な眼差しでマリンを見上げる。
「……遅くなってごめんなさい、マリン」
その声。胸の奥を激しく揺さぶる、あの愛おしい低音。
「レン、さん……どうして……その格好……私、あなたが急にいなくなって……私、また捨てられたのかと思って……っ」
溢れ出す涙で視界が歪む。レンはゆっくりと立ち上がると、耐えきれなくなったというようにマリンの華奢な身体を抱き寄せ、その身を力強く、壊れ物を扱うかのように愛おしく抱きしめた。
「ごめんなさい……! 黙って姿を消してしまって……本当に、恐ろしい思いをさせましたね。二度と、二度とあなたを一人になんてさせない……っ」
耳元で聞こえる、激しく波打つ彼の鼓動と温かな息遣い。マリンの胸は破裂しそうなほど高く鳴り響いた。久しぶりに触れる彼の体温。幻ではない。本物のレンが、今自分の目の前にいて、自分を強く抱きしめてくれている。
レンはゆっくりと腕の力を緩めると、マリンの濡れた頬を大きな手で優しく包み込み、指先で愛おしそうに涙を拭った。彼の紺碧の瞳にも、うっすらと涙が浮かんでいた。
「……本当の名前を隠していてごめんなさい、マリン。私は、アーツ王国の第二王子、レナード・アーツです」
「え……王……子……様……?」
街の人々から悲鳴に近い歓声とどよめきが上がった。アーツ王国の第二王子――そのあまりにも巨大な事実が、マリンの頭の中を白く染め上げる。
「私は当時、自国での不毛な王位継承争いやドロドロとした政争にひどく疲弊していました。誰が敵で誰が味方かも分からない世界から逃げ出したくて、正体を隠し、ただの平民の『レン』としてこの国へ身を潜めていたのです」
レナードはマリンの手をそっと取り、己の胸の上に当てさせた。服越しに、彼の強い鼓動が手に伝わってくる。
「ですが……あの日、薄暗い路地裏であなたに出会った。泥にまみれ、傷つきながらも、透き通るような美しさと気高さを持ったあなたに、私は一目で心を奪われました。あの日から、私の世界はあなただけに染まったのです」
「一目惚れ……?」
「はい。何度も街を巡り、一緒にお茶を飲み、笑い合い……あなたの温かで優しい本質に触れるたび、私はどんどんあなたに惹かれていきました。あなたが隣にいない人生など、もう私には何の意味もないと思えるほどに」
レナードの瞳には、一切の迷いも偽りもない、純度百パーセントの愛の光が宿っていた。
「あなたが過去に深く傷つき、自分を失いかけていたことを知り、私はあなたを何としても守り抜きたいと誓いました。だから、あなたのことを調べさせたのです。……そうしたら、あなたが帝国のハーツウェル公爵家の令嬢であり、どれほど残酷に虐げられ、傷つけられていたかを知りました」
レナードの表情が、一瞬だけ激しい怒りと憤怒に染まる。
「あなたを踏みにじり、偽物と蔑んで捨て去ったこの国の王族に、私は抑えきれない怒りを覚えました。そして同時に知ったのです。あなたが公爵家を去り、聖女を辞任して、本当の平民になろうとしていたことを……。あなたと対等に添い遂げるためには、私自身が自分の立場から逃げるのをやめ、アーツ王国の王子として腹を括らねばならないと痛感したのです」
「それで……あんなに急にいなくなったのですか……?」
「はい。あなたに理由を言えば、あなたは優しいから『自分のために危険な真似をしないで』と私を止めるでしょう? だから無言で自国へ戻り、不毛な政争を完全に力でねじ伏せ、父上や兄上を説得してきたのです。『私には生涯をかけて愛したい女性がいる。彼女以外の妃など要らない』と。あなたを正式な私の妃として迎えるための準備をすべて整えるのに……どうしても時間が必要だったのです」
レナードはマリンの手を強く握り直すと、もう一度マリンの前に真っ直ぐに跪いた。そして、胸元から眩い星のようなダイヤモンドが嵌め込まれた、指輪を取り出す。
「悪いマリン・ハーツウェル様。……いいえ、私の愛するマリン。もうあなたに悲しい思いも、理不尽な思いもさせない。私があなたの盾となり、あなたの光になります。私と共にアーツ王国へ来てください。私と婚約し、私の生涯の妻になっていただけますか?」
静まり返る街の中、ふたりの間を優しい冬の風が吹き抜けた。
マリンの胸の中を駆け巡ったのは、途方もない大きな感動と、胸が引きちぎれそうなほどの恋のときめきだった。 かつて偽りの聖女として辱められ、愛した国と王子に捨てられ、すべてを失った自分。けれど、この人は自分の隠された過去も傷もすべて知った上で、ただの「マリン」という一人の人間を愛し、その愛のために自分の運命と戦って迎えに来てくれたのだ。
「私……私で、本当にいいのですか……? もう聖女でもなくて、なんの力も持っていない……ただのマリンなのに……っ」
「ただのあなたが良いのです。あなたが、私の生きる理由だから」
レナードの偽りのない言葉に、マリンの目から涙がボロボロと溢れ落ちた。けれどそれは、もう二度と絶望の涙ではなかった。世界で一番幸せな、歓喜の涙だった。
「はい……! はいっ……! お願いします……レンさん……私を、あなたの隣にいさせてください……っ!」
マリンが胸に飛び込むと、レナードは歓喜に満ちた表情で彼女をしっかりと受け止め、そのまま抱き上げた。街中から割れんばかりの大きな歓声と拍手が巻き起こる。レナードはマリンの薬指にそっと指輪を嵌めると、彼女の額に、そして震える唇に優しく、愛を誓うキスを落としたのだった。
その後、レナードはマリンの手を引いてハーツウェル公爵邸を訪れた。 両親は突然現れたアーツ王国の第二王子と、見違えるように幸せそうに微笑む娘の姿に驚愕したが、レナードの誠実な態度とマリンへの深い愛を知ると、父も母もボロボロと涙を流して二人を祝福した。
「マリンを……どうか幸せにしてください。私たちの宝物なのです」 父の言葉に、レナードは力強く頷いた。「私の命と尊厳に代えても、生涯守り抜きます」と。
こうして、二人の婚約は正式に決定し、アーツ王国とハーツウェル公爵家の双方から盛大に発表されることとなったのだった。
――だが、この輝かしい祝福の裏で。 マリンを追い詰め、偽物と蔑んで捨て去ったスウィーム帝国には、すでに取り返しのつかない破滅の足音が忍び寄っていた。
二人の婚約発表の報せは、瞬く間に大陸全土へと駆け巡った。 「隣国アーツ王国の第二王子レナードが、ハーツウェル公爵家の令嬢マリンと婚約」――その一報は、スウィーム帝国の王宮を激震させた。
だが、その時すでに、スウィーム帝国は未曾有の危機に瀕していた。
マリンが聖女を辞任し、国を去ってから数ヶ月。 魔物たちの侵攻を防いでいた巨大結界はひび割れ、各地で凶暴な魔獣が暴れ回り始めていた。重症者は溢れかえり、街は病と恐怖に包まれていた。
「なぜだ! アーリィ、結界の維持はどうなっている! 新薬の開発は進んでいるのか!?」
王宮の大広間で、エトリック第一王子が狂気を含んだ声を張り上げる。 その傍らに立つアーリィ・グレイは、かつての可憐な装いも影を潜め、恐怖でガタガタと震えていた。顔色は蒼白で、髪は乱れている。
「ひ、殿下……無理です……! 私の魔力では、こんな広大な結界なんて維持できません……っ! 薬の処方だって、私には何が書いてあるのかすら……っ!」
「なにい!? 貴様、マリンより自分の方が魔力が強く、仕事もこなしていると言っていたではないか!」
「そ、それは……っ!」
アーリィの化けの皮が完全に剥がれ落ちた瞬間だった。 彼女はマリンの成果を盗み、甘い言葉でエトリックを騙していただけの、魔法もロクに使えない無能な女に過ぎなかったのだ。マリンという圧倒的な才能と犠牲の上に成り立っていた平和を、己の浅はかな虚栄心のためにぶち壊した事実に、ようやく愚かな王子は気づいた。
「嘘つきめ……! 貴様のせいで、我が国は滅びかけているのだぞ!」
国王も王妃も、自分たちが息子の言葉を鵜呑みにして真の聖女を追い詰めた過ちに気づき、青ざめて倒れ込んだ。だが、もう遅かった。帝国中の民からは「偽りの聖女に騙された愚かな王家」「慈愛のマリン様を捨てた報いだ」と、激しい怒りと不満が爆発していた。聖女としての信頼も、王家としての権威も、完全に地に落ちたのだ。
追いつめられたエトリック王子は、なりふり構わず行動に出た。
「マリンだ……マリンを連れ戻せばいい! あいつは私を愛していたはずだ。もう一度婚約してやると言えば、泣いて喜んで戻ってくるに違いない!」
自尊心だけを肥大化させたエトリックは、豪華な護衛を率いて、隣国アーツ王国の王宮へと乗り込んだ。
アーツ王国の眩いばかりの大広間。 そこに足を踏み入れたエトリックを待っていたのは、見違えるほど美しく、気品に満ちたマリンの姿だった。
純白の美しい髪には繊細な宝石が飾られ、上質な蒼のドレスを纏った彼女は、まさに女神のごとき神聖な輝きを放っていた。その隣には、彼女を慈しむように腰を抱き寄せる、圧倒的な気品を持つ男――アーツ王国第二王子レナードが立っている。
「マリン! 逢いたかったぞ!」
エトリックは二人を無視するように前へ踏み出し、勝ち誇ったような笑みを浮かべて手を差し伸べた。
「朗報だ、マリン! 愚かなアーリィの嘘はすべて見破られた。貴様を貶めた罰として、あいつは処刑……いや、永久に修道院へ幽閉する! だから安心しろ。貴様の聖女としての地位を戻し、特別にもう一度、私との婚約を赦してやる! 感謝して今すぐ帝国へ戻り、結界を張り直すのだ!」
大広間にいたアーツ王国の貴族たちから、呆れ果てた失笑が漏れた。 自分を追い詰め、平民の街へと捨て去った張本人が、反省の一色もなく上から目線で「もう一度婚約してやる」と言い放ったのだ。
マリンは、静かにエトリックを見つめた。 かつては彼の一言に傷つき、絶望し、自分の存在価値すら見失っていた。だが、今のマリンの心には、冷ややかな失望と、一筋の迷いもない確信しかなかった。
マリンはゆっくりと口を開いた。その声は、広間全体に凛として響き渡る。
「……お断りいたします、エトリック殿下」
「なっ……!? 何と言った、マリン!?」
「私は二度と、あなたのもとへは戻りません。そして、スウィーム帝国の聖女に戻ることもありません」
マリンの澄んだ瞳には、力強い光が宿っていた。
「私はかつて、身を粉にして帝国の民とあなたのために尽くしてきました。ですが、あなたは私の言葉に耳を貸さず、真実を見ようともせず、私を泥の中に踏みにじった。……私を捨てたのは、あなた方です」
「くッ……だが、国が滅びかけているのだぞ! 聖女たる者が民を見捨てるというのか!?」
エトリックが見苦しく叫んだその時――。
「不躾な口を慎め、愚か者」
地鳴りのような、低く圧倒的な圧迫感を伴う声が響いた。 レナード王子が前に踏み出し、マリンを庇うようにエトリックへ冷徹な視線を射抜く。その紺碧の瞳には、氷のような怒りが宿っていた。
「マリンは我がアーツ王国の宝であり、私の愛する唯一の婚約者だ。貴国が己の愚かさと強欲さによって自滅しようと、もはやマリンには何の関係もない。己の不始末を、一度捨てた女性に押し付けようとは……スウィーム王家の見識も地に落ちたものだな」
「な……レナード王子! 貴様、他国の内政に――」
「内政? 違うな」
レナードは冷笑を浮かべ、控えていた従者に羊皮紙を出させた。
「貴国がマリンを追い詰めた結果、結界が破れ、我が国の国境付近にまで魔獣の被害が及びつつある。これはすでに我が国への明確な脅威だ。アーツ王国は本日を以て、スウィーム帝国とのすべての国交を断絶し、経済制裁を発動する。……当然、我が国の『真の聖女』たるマリンが、貴国のために力を貸すことなど万に一つもない」
「な……に……!?」
絶句するエトリック。 レナードは手袋を嵌めた手で、エトリックをゴミでも見るような目で見下ろした。
「失せろ。二度と私の妃にその汚い顔を見せるな」
レナードが手を一振りをすると、控えていた近衛兵たちが一斉に剣を抜き、エトリックを包囲した。 身の毛もよだつような圧倒的な威圧感に、エトリックは膝から崩れ落ち、無様に腰を抜かした。
「ひ……ひぃぃっ……! マ、マリン……助けてくれ、マリン……っ!」
惨めに命乞いをしながら引きずられていくエトリックの姿に、大広間からは万雷の拍手と喝采が巻き起こった。
惨めな末路を辿ったのは、エトリックだけではなかった。 自業自得により国家としての威信を失ったスウィーム帝国は、魔獣の被害と経済制裁によって急速に衰退。
エトリックは王位継承権を完全に剥奪され、アーリィと共に死ぬまで極貧の過酷な労働へと追いやられた。彼らは一生、自分たちが捨てた聖女の真の価値と、犯した過ちを後悔しながら生きることとなったのだ。
それから、一年の月日が流れた。
アーツ王国の王都は、抜けるような青空と、舞い散る祝福の花びらで満たされていた。 大聖堂の鐘が祝福の音色を響かせる中、マリンとレナードの盛大な結婚式が執り行われていた。
大聖堂のバージンロードを歩くマリンの手を、温かく包み込むのはハーツウェル公爵――最愛の父だった。父と母の目には、嬉し涙が光っている。
「マリン……本当に、綺麗ですよ。幸せにおなり」
「ありがとう、お父様、お母様……」
祭壇の前で待っていたレナードは、歩み寄るマリンを見つめ、眩しそうに目を細めた。その表情には、世界中の何よりも深い愛が溢れている。
「マリン。私の元へ来てくれて、ありがとう」
「レンさん……ううん、レナード様。私を見つけてくれて、本当にありがとうございました」
ふたりは互いに手を取り合い、神前で永遠の愛を誓った。 指輪が嵌められ、誓いのキスが交わされた瞬間、大聖堂を埋め尽くした万民から歓喜の歓声が上がった。
かつて、すべてを奪われ、絶望の雨の中で泣いていた少女は、今、自分を心から愛してくれる最愛の人の隣で、世界で一番幸せな笑みを浮かべていた。
「一生、あなたを愛し、守り続けます。私の愛する、世界で唯一の聖女」
「私も……あなたを永遠に愛します。私の大切な、光になってくれた人」
降り注ぐ黄金色の陽光の中、二人の永遠の幸せの物語は、ここから新しく始まっていくのだった。
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書きたいときに少しずつレンの国に行ったあとの物語を書こうと思います!是非見てくださると幸いです




