食事
「ステラ嬢今日お食事行かないですか?」
「今日ですか?皆行けますかね。誘ってみますね。」
「あっ…」
「どうしました?あ、行かないと!声かけときますね。失礼します!」
レオンハルト·メイナード様は最年少で宰相になった方で多忙にも関わらず、いつも皆を食事に誘ってくれる優しい良い上司だ。銀髪に澄んだ青い瞳をしているレオンハルト様は、笑わないとの噂と色も相まって氷の宰相と呼ばれている。しかし意外と笑うし声だってかけてくれ噂の様な事は全く無い。いつも気をかけてくれるし先輩方も皆優しいし、今年宰相室に配属されて良かったな。
「あ、先輩!今日レオンハルト様が食事どうかって言ってましたよ。皆ご都合どうですか?」
「あぁ…いつもの宰相会ね。集めとくよ。」
本当頑張るよねーって先輩が笑っている。ん?って思ったけど、なんでもないよって流され集めとくから気にしないでー、ほら行かないとって背中を押された。
「鈍感娘が相手だと宰相も大変だね。」
「本当にね。何回宰相会したら気がつくのかな。宰相もはっきり2人でって誘ったらいいのにー。」
「それが出来たら毎週宰相会開かれてないって。」
そうよねーと先輩達が話をしていたなんて、1ミリも思っていなかった。今日もお食事会!いつも美味しいご飯食べさせてもらえるからラッキー。今年から始まったみたいだし、皆とも仲良くなれて最高じゃない?ウキウキしながら書類を届けに宰相室を出る。
私ステラ·ハワードは王宮で働きだして今年3年目で、2年間は別の部署に居たが今年何と宰相室勤務に抜擢され驚いた。見目麗しい氷の宰相様は令嬢方に大人気で、皆取り合う程の人気部署になっている。宰相は冷たいが私なら溶かせると謎の自信に溢れた令嬢達が、幾度と無く挑み敗北しているらしい。移動して半年になるけど、挑む令嬢方を見た事が無いので私には全くわからない。このまま穏やかな職場で長く居たいなー。
って思っていたのが昨日の朝、何故レオンハルト様は私の隣で寝ているのでしょうか?朝起きたら知らない場所に居て、温かい何かに包まれていた。いつもと違うと目を開けると誰かに抱きしめられていた。は?何これ?どういう事…まさか?!お布団の中を見ると服は着ている。ってか誰?割りとがっつり抱きしめられていて離れられない。
「ステラ嬢?大丈夫?」
「…ん?」
あのままもう1度眠っていたようで誰かに起こされる。眠い…起きたくなくて、もうちょっと寝たいって抱きつく。…違う!さっきの記憶が急に出てきた!
「ゴメンなさい!」
ガバっと起き謝るとレオンハルト様が顔を手で覆い、起き上がる私を指の隙間から何とも言えない目で見ている。え?レオンハルト様?そもそも何があった?意味が分からない。
「昨日ステラ嬢が酔ってしまっていて…帰りたくないって離れなくてですね。とりあえず我が家に連れてきたのだけど、全く剥がせなくて…あ、何もしてないからね!神に誓ってしてません!!」
「さっき抱きしめられてました…」
「うっ…それは…」
「あ、違う…私が悪いのですよね。離れなくてすいませんでした!わざわざお家まで連れて来ていただき、大変申し訳ありませんでした!」
精一杯頭をベッドに付け謝る。まさか酔ってこんな事を仕出かしてしまうなんて。クビだろうか…上司に迷惑かけるなんて…。
「大丈夫だよ?ね?落ちついて?お腹空いてない?朝食を食べようよ。」
「お腹ペコペコです…ご迷惑かけた上すいません。」
「フフッ…全然いいよ。迷惑かけられてないから気にしないで。」
神!優しい上司を持って私は幸せだわ。レオンハルト様のお家凄く広い。さすが由緒正しい血筋は違うなー。
「抱きしめたけど本当に何もしてないからね。」
「わかってます。レオンハルト様が私に何かする訳無いですよー。良い上司で良かったです。」
あ…うん。って微妙な空気になる。何故か周りの使用人の方達も微妙な顔をしている。お腹空いてたから美味しい!昨日何食べたかもわからないくらい記憶が無い。変な事してなかったらいいけど。
「あの昨夜私何か仕出かしてましたか?全く記憶が無いのですが…。」
「私は少し遅れて行ったのですが、行った時には酔ってました…私を出迎えてくれたのですが、膝枕して欲しいと離れなくなってしまって…」
「それは…すいません。」
赤くなり説明してくれるレオンハルト様が気の毒に思う。酔った部下に絡まれ離れなくなるなんて地獄だろう。
「しばらく膝枕をしていたら寝てしまい、帰る時間に起こしたのですが…起きた貴方が抱きついてきて皆頑張ってくれたのですが無理でした。そして連れ帰り起きたのが先程です。」
「あぁ…なんて事をしてしまったのか。頑張って働きますから、クビにはしないでください。」
俯き涙が出そうになってしまう。思った以上に迷惑をかけていた。どうしよう。
「落ち込まないで下さい。クビとか無いから!とりあえず私で良かったよ?他の人だったらどうなっていたか。私が居ない場所ではもうお酒は呑まないでね?」
「…はい。頼れる上司で良かったです。これからは迷惑をかけず良い部下として頑張ります。」
「…頑張って。」
「今日のお詫びに何でもしますから、1つだけですけど何でもどうぞ!いつでも言ってください。」
「何でも?本当に?」
はい!って返事をすると、レオンハルト様はわかったって微妙な顔をしている。朝食も頂いたし、そろそろ帰ろう。あんまり長居しても迷惑だろうし。今日が休みで良かった。帰りますって告げたら送るって言ってくれたけど、寄る所あるのでと断って1人帰る。
「気をつけて帰ってね。」
ありがとうございました!と手を振りレオンハルト様とお別れする。本当宰相室勤務になって良かったー。
「ステラ!どういう事だ?!宰相閣下から泊まらせると何故連絡が?付き合っているのか??!」
「違うよー。酔った私を面倒を見てくれただけ。あの宰相様が私となんて無い無い。」
「宰相閣下は一部下にそんな事をしてくださるのか?まぁステラではあの社交界の華は落とせる訳ないかー!」
ハハハッと笑うお父様に苛立つ。娘を何だと思っているのかしら!失礼しちゃう。
「私からすれば落とすのなんて簡単ですけどね!レオンハルト様は優しいしあんな方が旦那様ならいいですよね。お父様とは違って!!」
「無理無理。何人いや何十人の美しい令嬢が打ち砕かれたと思ってるんだ?落とせたらステラの願い事1つ何でも聞いてやるわ!」
「いいですね!国の1つでも買ってもらいましょうかね?この戦い勝つのは私ですからね!!!」
「期限は今年いっぱいだからな。それ以上の猶予は無い。あぁあんな方が義理の息子になる日は来るのかなー?無理なら私が決めた相手と年明けすぐ結婚させるからな!」
「すぐ連れて来て見せますから!国を買うお金を用意して待っていて下さいね!!」
楽しみだなって笑うお父様と別れ部屋に入る。…いらぬ売り言葉に買い言葉。落とせる訳無いでしょ!!フリして下さいってお願いしてみる?いや、あのお父様は結婚するまで許さないだろうし…はぁ結婚したくないよー。
「お嬢様は馬鹿ですか?」
先程のやり取りを見てた侍女に突っ込まれる。ですよねー?負けるのは嫌だけど勝てる見込みないし…まぁそのうちお父様忘れるかも!
「旦那様は忘れませんよ?今までお嬢様は何回無謀な賭けをしてきたか…乗せられやすいのだから気をつけて下さい。」
「はい…この問題はどうしたらいいかな?」
「1度挑んでみたら如何ですか?とりあえず意識して貰って今年中に少しずつ落とせるかも知れませんよ。」
「なるほど!今までした事ないけど色仕掛けしてみるわ!」
頑張ってくださいと応援され、とりあえず挑む事にした。挑まず負けを認めるのはお父様に腹立たしいだけですもの!よしぶち当たってみよう!




