城ゴーレムをすり潰せ
天使ザリエルが大天使へと進化を遂げて元権天使カミルを調伏した、その時。
スドッガァーーーーーン!
という、この世の終わりのような物凄い轟音が鳴り響いた。
「わ、わわ、わ! ゆれ、揺れーーーー!」
訪れる激しい揺れ。
抜群の体幹と身体能力を誇るカミルが、バランスを崩すザリエルやセレアナを支える。
「みんな無事かっ!?」
「は、はい、どうにか……」
オレは全員の無事を確認すると、何が起こったのか確かめようと部屋の外に飛び出した。
「お、おお。これは……」
ゴリゴリガリゴリッ……。
そんな音を立てながら、城ゴーレムを押し潰そうと巨大要塞オメガが上からのしかかってきている。
オレが呆気にとられていると、反対側の通路から異界からの一般人ドミー・ボウガンと、その舎弟の勇者ラベル、そしてアカオニのズィダオが駆けつけてきた。
「みんな無事だったか?」
「はい、ズィダオのおかげでなんとか。しかし……こりゃ、なんですかね……」
「ああ……なんだろうな……」
ズィダオはオメガについて、オレはこの状況について、それぞれ疑問を口にする。
(イギア、オメガに乗ってる?)
オレはフィード皇国の通信大臣イギアに思念通話を送る。
(は、はい、い、い、い、い、乗、っ、て、ま、す~!)
と揺れ揺れの返事が返ってくる。
(イギア、落ち着け。思念通話は声帯を使ってるわけじゃないから言葉は揺れないぞ)
(はい……あ、ほんとだ……)
(で、なにをどうしてこんなことに?)
(はい、フィード皇国の戦闘員全員オメガに乗ってから、タイラーさんが運転して……)
(運転?)
(あ、はい。なんか操縦席みたいなのがあって運転出来たみたいです。タイラーさんは、これを「飛空船」って呼んでましたけど……)
ああ、タイラーってたしか職業が【航海士】だったっけ。
この辺には海なんてないから気にしてなかったけど、まさかオメガを飛空船扱いするとはね……。
(で、どうしてこんなことに?)
(はい、まずはこの動き回る城の「足を止める」ことを優先するということで)
(それで上から圧力かけてるってわけか)
(はい、そうです)
なるほど。
確かに城ゴーレムの足は止まっている。
そしてオレ達の残りのタスクは「魔王を見つけ出して倒すこと」だけだ。
ふむ。
じゃあ、この状況でオレ達がするべきことは……っと。
──事前準備。
元冒険者ギルドの受付嬢で今はオレの秘書のミアから奪ったスキル【事前準備】で今後の予定を計算していく。
カチャカチャカチャとオレの頭の中でそろばんが弾かれていき、やがて一つの筋道が導き出された。
「あらぁ、一体これは何事なのかしらぁ?」
「わわわ、なんですかこれは……」
部屋から出てきたセレアナ達に、オレは声をかける。
「お、みんな来たか。悪いがもうひと働きしてもらうぞ。ザリエルくん、いや大天使ザリエル。まだテンペストとしてオレに手を貸してくれるな?」
神々しさの増したザリエルは、以前と変わらぬ笑顔で返事をする。
「もちろんですよ。こんな巨大な悪と戦う人たちを監視しないわけにはいけないですから」
オレは、そのザリエルに細かい点を修正していきながら、みんなに指示を出していく。
やることは3つ。
城ゴーレムの両足の破壊。
住民の避難。
そして魔王の捜索。
そのうち両足の破壊は、元権天使カミル、山賊セイレーンのセレアナ、地上に居るゴブリン達に任せることにした。
住民の避難は、人の姿をとらせたグレートハーピーのスピーク、勇者ラベル、一般兵ドミー・ボウガン、大天使ザリエルが呼びかける。
そして、最後の魔王の捜索。
「おお、兄じゃないですか!」
「弟よ、すごい姿になってるな!」
「兄の方こそ、強そうです! 」
再会を喜ぶズィダオ、カイザーの兄弟と、アオオニのソウサーに任せることにした。
ズィダオの探しものを見つける力【方角確定棒倒し術】とソウサーの【探索者】があれば、魔王を見つけることは可能なはずだ。
もし強敵がいても職業【チャンプ】のカイザーがいれば、そう簡単に負けることはないだろう。
操縦から手を離せないもう一人の兄弟タイラーを残して、三匹のオニは魔王捜索へと向かう。
「さて、と……」
フェンリルの影から呼び出したダイアウルフに乗って城ゴーレムの体表を駆け下りていくセレアナ、ラベル、ドミー、ザリエル、カミルを見送りながらオレは呟く。
「城ゴーレム、すり潰してやるとしますか」
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