表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
82/92

ジャッジメント

 最上位悪魔すらをも軽く上回る武技ぶぎと力を持った最強天使カミル。

 そんな彼を倒す切り札。

 それが、我らが執政集団テンペストの一人、天使ザリエルくん……らしい。


 スキル【狡猾】の指し示したその選択に、オレは乗ることにする。


「ザリエル、そもそもなんであいつは洗脳が解けたのに襲いかかってくるんだ?」

「あわわわ、えっと、自分が洗脳されてたことを知る者を抹殺しようとしてるのかと!」

「あ? つまりは、もみ消したいってことだよな?」

「は、はい、そうですねっ!」

「ザリエルくんさぁ、ちゃんとオレたちも『もみ消し目的』で来たって伝えた?」

「言いましたよ、何度も! でも信じてくれないんですよ!」


 ああ、そういうこと。

 要するにオレたちを信頼できないってことか。

 権天使本人も洗脳明けで疑心暗鬼になってる。

 そんな中で、見ず知らずの集団が現れて「もみ消しを手伝いに来た」って言っても信用されないか。

 となると。

 ここはやはりザリエルくんが適任みたいだな。


「うん」


 オレはひとつ頷くと、ザリエルくんの肩を掴んでカミルの前に引っ張り出す。


「え、いや、ちょっと! えっ!? ボク戦えないですよ!?」


 無言で見つめ合う2人の天使。

 とても気まずそう。


「グスっ……一介の天使ごときが何の用だ?」


 先に口を開いたのは未だ涙目の権天使、カミルの方だった。


「ああ……いや、だから、何度も言ってるようにですね……ボク達は、あなたの失態をもみ消しに来たんですよ……」

たわけっ!」

「ヒィ……ッ!」


 カミルの一喝。

 ザリエルくんは顔を覆ってる。


「ただの天使ごときが誰に物を言っている……?」

「ああ、いえ、だからですね、ボクも人間界を監視する者の一人として、主天使様に報告する前に、こうして事態を収拾しに来てるわけで……」


 わたわたと汗を飛ばしながら説明するザリエルくん。

 オレは、そんな彼に助け舟を出すことにした。


「権天使カミル。彼も言っているように、我々と君の目的は同じだ。決して君を断罪するために来てるわけではない。だから、ちょっとでいい。彼の話を聞いてやってくれないだろうか。我々を信用するもしないも、その後に判断すればいいだろう」

「グスっ…………よかろう。話すがよい」


 鼻をすすりながらそう答えるカミル。


 オレは確信している。

 薔薇騎士の職業スキル「審判」。

 冷静に話しさえすれば、彼はちゃんと倫理に従って判断を下してくれるはずだ。

 そして。

 それはの言葉は、真面目で正義を重んずるザリエルくんの口から出たものだからこそ届くはずだ。


「んんっ」


 咳払いをして喉のつかえを取ると、ザリエルくんは、おずおずと話し始めた。


「で、では、権天使カミル。まずは、あなたの人間界での功績について確認させていただきます」

「……勝手にしろ」

「はい。権天使カミルは、これまで数百年もの間人間を悪魔の誘惑から護る役割りをにない、それをまっとうしてきました。その事実は、その後何があろうと絶対に揺るぐものではありません。そのことから、彼は天使としての己の役目を全うすることの出来る、責任感の厚い天使であると断言できます。」

「…………」


 黙ってザリエルの言葉に耳を傾けているカミル。


「はい、では続けます」


 最初はおどおどした様子で話していたザリエルだったが、次第に普段の調子を取り戻していく。


「そんなあなたが、不幸にも大司教に化けたデーモンロードのスキル【精神汚染】によって洗脳されてしまいました。これは事実で間違いないですね?」

「……ああ、事実だ」

「わかりました、では続けま……」

「ウオ~ン!」


 突如カミルが泣き出した。


「なんだなんだ! 何だというのだ! やっぱりお前は、皆の前で私をはずかしめたいだけではないのか!」


 え、この天使メンタルよわっ。

 いや、ちょっと突かれただけでこうなるってことは、それもカミルが己の恥や責任を強く感じてるってことの証左しょうさでもあるのか……。

 ここを乗り越えれば、おそらくカミルを説き伏せられるだろう。

 がんばれよ、ザリエルくん。


 ザリエルは気圧されることなくカミルに向かって人差し指を突き出す。


「う……」


 その謎の迫力に気圧けおされて、思わず押し黙ってしまうカミル。


「ジャッジ。いいですか、権天使カミル? ボクたちは自分の胸の中にある規範に従い動いています。私たちは常に己の行動をジャッジし、天使が天使であるべく邁進しているのです。私が問うているのは、あなたの天使としての規範! わかったら……もう少し信用して話を最後まで聞いて下さい」


 不器用ながらも実直なザリエルくんらしい言葉。

 上位天使であるはずのカミルも、その迫力に呑まれて「わ、わかった……」と告げる。


「それでは続けます」


 神の恩寵。


 おそらく、今の発言で天使としての『格』を得る資格を有したのであろうザリエルくん。

 彼の体が柔らかな光に包まれてキラキラと眩しく輝いていく。


「人々を悪魔の誘惑から護る権天使カミル。我々天使とて万能な存在ではない。道を間違うこともあれば、謀略にかかることもある。しかし、我ら天使が天使である所以ゆえん。それは、己の心の持ち方によるものでる。失敗は恥ではない。恥なのは、自身の失敗を認められず、より大きな罪に足を踏み入れようとするその心根こころねなのだ」


 喋りながらどんどんと神的なオーラが増していくザリエルくん。

 オレは、そんな彼を“視”ながら、その変化していくステータスから目が離せなかった。


 名前:ザリエル

 種族:天使

 職業:大天使

 レベル:9

 体力:40

 魔力:587

 運命値:91

 スキル:オネスト・ジャッジメント

 職業特性:神の代弁者


 職業が天使から大天使へと変化し、職業特性も【神の代弁者】へと進化。

 スキルもユニークスキルへと進化を遂げている。


 そんなザリエルの変貌を見てオレはしみじみと思う。

 なんの力も持たず、おどおどとしていた彼。

 だが、唯一胸に持ち続けた正義の心だけは揺るがなかった。

 そうして過ごしてきた幾百年。

 ようやく神に認められる時が来たんだな、そのブレない正義を持ち続けてきたザリエルくんの強い心が。

 おめでとう、ザリエル。


 ザリエルの背中から生えている羽も一回り大きくなっており、天井の裂け目から差し込んでくる光に眩く照らされている。


「人一倍責任感が強く、思いやりの深い権天使カミルに問う。鍛え抜かれたその肉体、武技ぶぎを使うべきは目の前の罪のない人間たちに対してか。それとも……」


 大天使へと進化したザリエルの体が、一際に大きく輝きを増す。


「己を陥れた悪魔に対してか!? 今後どのように正義を執行し、自らの贖罪しょくざいを行っていくつもりなのか! その考えを聞かせよ、権天使カミル!」


 ザリエルの言葉に、すでに戦意を喪失していたカミルは地面に膝をつき涙を流している。


「う、ううっ……わ、私は、私は己の犯した罪を償うため、これからより一層力を入れて悪魔と戦っていきます……。そ、そして……どうか私から権天使の階級を剥奪してください……」


 天使は、泣く。

 「く」でも「鳴く」でもない。

 泣くのだ。


 己の罪を認めて、次の一歩を踏み出すために。

 後悔を涙粒なみだつぶに込めて、この場に置いていけるように。

「ザリエルくんが立派になってよかった」と思っていただけた方は↓の【★★★★★】をスワイプorクリックしていただけると作者の励みになります。

さらに、よければ【いいね】【ブクマ登録】などもいただけると、とても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ