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どうして3人部屋の移動になるの?


 目を覚ますと私はベッドの上にいた。だがいつもと視界が異なる。私はいつものベッドではなく、シーツをかけていないベッドに寝ていたのだと気付く。起き上がった拍子に身体にかけられていたジャケットがずり落ちる。


――? これは、ドゥスールの?


 電気がついているが、窓から差し込む光は朝を示していた。


――そうだ!ルシウス!


 ベッドから降りようとした時、視界の下方に規則的な呼吸をしているドゥスールを捉える。どうやら、私が寝ていたベッドを背もたれに地面に座って寝ていたようだ。私は彼に感謝をしつつ、反対側の壁に沿って置かれているもう一つのベッドを見る。ルシウスはどうやらベッドの上にいて、荒い呼吸は聞こえてはこない。


 私がベッドから下りると、その拍子にドゥスールは目覚めたようだ。


「んっ……!?」


 ドゥスールはぎょっとした目でこちらを見る。そして暫くして一つ咳払いをする。


「ごめんなさい、起こしてしまって」

「ごほんっ。いや、お気になさらず」

「ルシウスは……」


 彼を見ると先ほど見た通り、ベッドの上でうつ伏せで寝ているようだ。でも何故か床でぐしゃぐしゃになっていたはずの私の服がベッドに乗っていた。私が疑問を感じていると、ドゥスールに声を掛けられる。


「えっと、葵さんはお着換えになったほうがいいのでは?」


 彼の言う通り服は破けてボロボロになってしまっている。


「そうですね。でもなんで私の服がルシウスの寝ているベッドの上に――」

「っちょおッと待って下さい!」

「え?」


 私が服を取ろうとルシウスの方に向かうと、珍しく声を荒立てたドゥスールは私の行き先に立ちふさがる。


「んんっ。スタッフ用の予備の服はありますか?」

「はい。ありますが……」

「じゃあ、それを着てください。それと彼の分も用意してください」

「? わかりました」


 私は指示された通りにルシウスの着替えを用意すると、ドゥスールにシャワーを浴びることを勧められる。たしかに、あれから気を失ってしまって昨日はシャワーを浴びていない。私は彼の言う通りに、身体を清めることにして、仮眠室を出て行く。


 お店の入口に付けてあるドアベルの音が聞こえたため、私はサッと身体を洗い終えて、身体を拭いて服を着る。髪の毛は簡単に水気を取り、タオルは首にかけたまま出ると、そこにはオーナーとオスカー先輩がいた。


「オーナーに、オスカー先輩……」

「おぉ、同居人急に体調が悪くなったんだって? ちゃんと看病したのか?」

「ちゃんとだなんて失礼だろう。葵君は獣人君の時もしっかりと看病していただろう?」

「あ、えっともう大丈夫みたいです。仮眠室で寝てると思うんですけど」


 そこに丁度仮眠室からドゥスールが出てくる。


「ドゥスールさん! ルシウスは?」

「あぁ、彼ならさっき目が覚めて帰って行きました。あぁ、マスターさん。スタッフの予備を1着彼に貸し出しましたが、よろしかったでしょうか?」

「あぁ、大丈夫ですよ」

「ルシウス帰っちゃったのか……」


 絶対目が覚めたら殺されると思っていたので、私に文句の一つも言わずに帰ったことを少し疑問に思う。


「マスターさん、少しお話ししたいことが、此方に来てもらえますか?」

「分かりました。オスカー、葵ちゃんに朝食でも作ってあげなよ」


 ドゥスールの呼びかけに応えたマスターは、仮眠室に二人で入って行った。


「俺が特別に朝食を用意してやろう」

「あ、自分でやりますよ」

「まぁ座ってろって。たまにはいーだろ」


 私はオスカー先輩とキッチンに向かう。彼の手元をぼうっと見つめる。手首の力を効かせて、フライパンをあおる。あのスナップがあるからナイフの使い方も上手いんだろうなぁと思う。


「それにしても昨日は散々みたいだったな」

「……まぁ」

「だってさ、あの噂のルシウス様がお前と一緒に住んでたってことには驚いたよ。初めて見たわ、俺」

「……」

「てか、水ぶっかけられた時の静まりはヤバかったよな。折角マスターが周囲の目を逸らしたのに、やっぱり注目されてるし」

「……」

「ていうか、お前はあの獣人連れて来た時みたいに、わんわんと泣き始めるし、体調が悪くなったとか言うルシウス様がぶっ倒れて、あの男に引きずられながら仮眠室に籠るし。お前ら、醜態見せすぎだろ」


 先輩は吹き出すように笑う。


「えっと……。なんで全部知ってるんですか?」

「いや、あれは見るでしょ。寧ろ私達を見てくださいと言わんばかりだったよ」


 先輩の言葉に俯く。皆に見られていたことを思うと、引きこもりたい。私が貝になりたいと思い始めていると、先輩から救いの一言が発せられる。


「まぁ、俺とマスター以外、この事は覚えてないから安心しな」

「え、なんで」

「あの男に感謝するんだな。「今この店にいる奴を絶対に帰すな」だとか、急に「薬を買ってくる」だとか言って出て行って、大きな袋を抱えて戻ってきて。「忘却薬だから客やスタッフの飲み物に混ぜて全員に飲ませろ」とか言ってな。名目上はルシウス様から、この店の人に向けての祝いの酒が振舞われたって体だ。まぁ誰も覚えてはないんだがな」

「そんなことまで、してくれてたんだ……」


 ドゥスールの評価を大きく変えないといけないかもしれない。ただの女好きで、軽口を叩く軟派な人だとしか思っていなかった。彼の行動は私のためでもあるし、ルシウスのための行動でもあった。


「まぁ、あの変態男もたまにはまともになるってことだな。よし、出来たぞ」

「ありがとうございます」


 私は先輩によって作られた朝食を頬張る。


「これからどうすんの? 戻ってきていいって言われたし、戻りたいって言ってたよな」

「……」

「葵?」

「私ルシウスを酷く怒らせたみたいで、今帰ったら殺されるかも……」

「はぁ? なんで昨日の今日でそんな事に何だよ、お前ら……」


 私が朝食を食べ終えると同時に、マスターとドゥスールが出てくる。ドゥスールはやや疲れているようで、マスターがちょっと機嫌が悪そうに見えた。


「オスカー、葵君と一緒に買い出しに行ってほしいんだ」

「え、でもこないだ十分に買いだめましたよね?」

「ああ、でも買わなきゃいけなくてね。行ってくれるよね?」


 先輩が顎に手を当てて少し考えた後、マスターに質問する。


「……えっと、何を買ってくればいいですか?」


 先輩はメモを取りながら、私を引っ張った。


「早くいくぞ」

「え、そんな走らなくても」

「マスターめちゃくちゃ機嫌が悪いみたいだ。怒らせない方がいいぜ」

「え、あんなに笑顔なのに?」

「だからだよ! 早くここを離れるぞ」


 私たちが買い物リスト通りに大量の荷物を持って帰ると、ドゥスールはいなくなっており、いつも通りのマスターが店で待っていた。それにちらほら店のスタッフも来ているようだ。


「オスカー先輩……。どうですか?まだ怒ってますか?」

「いや、もう大丈夫みたいだ。ったく何なんだよ。一体」

「あのマスター。ドゥスールさんは?」

「あぁ、彼なら「もう疲労困憊です」って言って帰ったよ」


 今日は臨時休業日。店内装飾を元に戻すためだ。残りのスタッフも出勤し、皆で内装を元に戻し、コスプレ専門店に返す服が集められた。私の破れた服は、レンタル料から買取に変更すると申し出たが、服が1着用意できなかった理由でチャラにしてもらうことになった。


 やっと今日の仕事を終え仮眠室に戻った私は、昨日ルシウスが寝ていた私のベッドに寝転ぶ。


――はぁ、疲れた。


 私はルシウスになんと謝ろうか、ドゥスールにどうお礼をしようかと頭を悩ませる。そして、自身でも気づかぬうちに、そのまま寝ていた。


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 それから次の日私はルシウスの元に謝罪をしに足を運ぶが、宿の人に止められる。どうやら私を通すなと言われているらしい。面会謝絶されてしまった私はどうすればいいかドゥスールに相談する。「僕も一緒に行きましょう」と言った彼による、ルシウスと二人だけで行われた『話し合い』の結果、私はなんとか許されたようだ。


 そして何故か私達は3つベッドがある3人部屋に移ることになる。


「何で、3人部屋なの?」

「僕も一緒に住むことになったので、よろしくお願いしますね? 葵さん、ルシウスさん?」

「……」


 何故か私達は3人で住むことに。私には知らされていない謎の条約が結ばれた二人によって、私はなすがまま、現状を受け入れるしかなかった。


――一体何故、こんなことに!?


【ご報告】

3章はここまでとなります。ストックが尽きたので、更新頻度が遅れます。また、6月中は新シリーズの「カニバリズム殺人鬼とロリっ娘OLの監禁生活」の方を中心に書き上げていくので、良ければそちらもお楽しみください。


【簡単なあらすじ】

葵が目を覚ましてシャワーを浴びていると、マスターとオスカーがやってくる。いつの間にかルシウスは消え、急にオスカーと買い物に出かけるように指示される。帰った時にはドゥスールもおらず、スタッフで昨日行ったイベントの片付けを行う。ルシウスに面会拒絶された葵はドゥスールに力を借りるが、なぜか3人で住むことに。


【登場人物】

・葵

 本作主人公。一応女の子。「大変申し訳ございませんでした」


・ルシウス

 異世界で初めて出会った人物。「……その件はもう話したくない」


・ドゥスール

 怪盗ショコラ。天使から離れられない。「これで一つ屋根の下ですね」


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