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したはれて きにし心の 身にしあれば
「今はこれよりかへりね」とさねがいひけるをりによみける
藤原兼茂
したはれて きにし心の 身にしあれば 帰るさまには 道もしられず
(巻第八離別歌389)
「もうここで帰って欲しい」と源実が言ったので詠んだ歌。
あなたを慕う気持ちだけで、ついて来たのです。
帰る道など、まったくわからりません。
藤原兼茂は、源実を慕う気持ちだけで、ついて来てしまって、どこの場所を通ったのか、全くわからない。
だから、「もう見送りはいいから、お帰りに」と言われても、困ってしまったようだ。