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人やりの 道ならなくに おほかたは
山ざきより神なびのもりまでおくりに人々まかりてかへりがてにしてわかれをしみけるによめる
源実
人やりの 道ならなくに おほかたは いきうきしといひて いざ買えりなむ
(巻第八離別歌388)
送別の宴が終わっても、さらに神奈備の森まで送ってくれて、まだ人々が帰る様子がなく、別れを惜しんでいたので詠んだ歌。
この旅は、他人に命令されてする旅ではありません。いつもの皆様なら、ついて行くのは大変だと言って、さあ帰りましょうとなるのですが。
源実は、自分の都合で、筑紫まで湯浴みのための旅行。
それなのに、見送りの人々は、山崎での送別宴が終わっても、まだついてくる。
送る人々からすれば、よほど名残惜しかったのだろうか。
源実は、人気の高かった人なのかもしれない。