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いつはりの 涙なりせば 唐衣
藤原忠房
いつはりの 涙なりせば 唐衣 しのびに袖は しぼらざらまし
(巻第十二恋歌二576)
※唐衣:袖にかかる枕詞。
ウソ泣きであったならば、ひそかに袖の涙をしぼるようなことはしないのに。
目立たないように泣いて袖を絞るから、噓偽りのない涙と訴えている。
現実には、相手に涙を見せて気を引こうとする人がいたのだろう。
そして、相手も、そんな「見せかけの涙」に、コロリと騙されるし、そんな例が多かったのだろう。
ただ、そんな例は、現代でも耳にする話である。




