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はかなくて 夢にも人を 見つる夜は
素性法師
はかなくて 夢にも人を 見つる夜は 朝のとこぞ おきうかりける
(巻第十二恋歌二575)
※はかなくて:はっきりとしない状態で。ほんの少しだけ。
はっきりとしない、ほんの少しの間だけ、夢の中であの人を見てしまった夜は、その夜が明けても、床から離れづらいのです。
これも、古代人の夢に対する考え方が基本。
相手が自分のことを思っているから、自分の夢に現れる。
そうなると、はかなげな現れ方は、気になって仕方がない。
もう一度眠れば、はっきりと現れてくれるのだろうか、そう思えば、なかなか床から離れられなくなる。




