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わりなくも ねてもさめても こひしきか
よみびとしらず
わりなくも ねてもさめても こひしきか 心をいづち やらばわすれむ
(巻第十二恋歌二570)
もうどうにもならなくて、寝ても覚めても、あの人が恋しくて仕方がない。
こんな辛い心をどこに向ければ、あの人のことを忘れることができるのでしょうか。
心の中が、恋する人への思いに占められていて、何事も手につかないほど。
とにかく苦しいので、この心そのものを、どこかに別の方向に向ける、あるいは放り出したいとまで思っている。
ただ、それができないから、恋の苦しみは続いていく。




