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あけたてば 蝉のをりはへ なきくらし
よみびとしらず
あけたてば 蝉のをりはへ なきくらし よるはほたるの もえこそわたれ
(巻第十一恋歌一543)
※あけたてば:夜が明けると。
※をりはへ;ある事柄の時間が長く続くこと。
夜が明ければ蝉のように一日泣き暮らし、夜になれば蛍のように夜通し恋い焦がれ続けるのです。
昼も夜も、恋に鳴き、恋に焦がれる。
昼は蝉の鳴き声に、自分の泣き声を。
夜は蛍火に恋い焦がれる思いをかぶせる。
いわゆる「恋狂い」だろうけれど、ここまでくると辛過ぎる。




