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心がへ するものにもが かたこひは
よみびとしらず
心がへ するものにもが かたこひは 苦しきものと 人に知らせむ
(巻第十一恋歌一540)
※心がへ:心を取り替えること。
私の心と、あの人の心を取り替えることができれば、と思うのです。
それができれば、片思いが本当に苦しいものと、あの人に知らせることができるのですから。
片思いに苦しむあまり、自分の心とあの人の心を取り替えてしまいたい。
そうすれば冷淡なあの人も、私の苦しみがわかるだろうと、ありえぬ願望を抱く。
ただ、相手がそんな願望を知ったとしても、心がなびく保証など何もない。
それが辛いところだろうか。




