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こむ世にも もはやなりなむ 目の前に
よみびとしらず
こむ世にも もはやなりなむ 目の前に つれなき人を 昔とおもはむ
(巻第十一恋歌一520)
※こむ世;来世。
来世に、すぐにでもなって欲しいと思います。
目の前にいて、冷たくて心のない人のことなど、過去の人と思うことにしたいので。
おそらく、男の歌。
楽しみにしていた、夜這いを、女から、冷たく断られたのだろうか。
ていよく冷たくフラれて、寂しくトボトボと帰る道すがら、詠んだのかもしれない。
そうかといっても、次に夜這いする家も、見つからず。
こんなことなら、来世でやりなおしたい。
あんな冷たい女など、前世の人と諦めて。
平安京をため息をつきながら歩く、色好みの若い男が、浮かんで来た。