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忍ぶれば 苦しきものを 人しれず
よみびとしらず
忍ぶれば 苦しきものを 人しれず 思ふてふこと 誰にかたらむ
(巻第十一恋歌一519)
恋慕う気持ちを、表には出さず、ただ秘めているだけなので、本当に苦しいのです。
想い人には知られることもなく、ただ、こんな苦しい思いでいることを、いったい誰に打ち明けられるのでしょうか。
自分一人だけの心に秘め、相手には知られず、誰に悩みを打ち明けたらいいのかも、わからない。
「思いを打ち明ける」については、古今東西、相当な勇気と覚悟を必要とする。
この歌に共感する人も多いと思う。