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さ月まつ 山ほととぎす うちはぶき
よみびとしらず
さ月まつ 山ほととぎす うちはぶき 今も鳴かなむ こぞのふる声
(巻第三夏歌137)
五月になるのを待っているホトトギスは、羽ばたいて今、鳴いてくれないだろうか。
去年の聞きなれた鳴き声でかまわないので。
伊勢
五月こば なきもふりなむ ほととぎす まだしきほどの 声を聞かばや
(巻第三夏歌138)
五月が来てしまうと、その鳴き声もすぐに聞きなれたものになってしまいます。
ですから、その時期にはなっておりませんが、初々しい今の鳴き声を聞きたいと思うのです。
いずれも、ホトトギスの鳴き声を、待ち焦がれ、鳴くようにと急かしている。
(巻第三夏歌137)は、昔の鳴き声でもいいから、と願う。
(巻第三夏歌138)では、初々しい今の鳴き声でも、と願う。
ホトトギスにとっては、鳴きたい時に自然に鳴くので、大きなお世話というところかもしれない。




