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あはれてふ 事をあまたに やらじとや
う月にさけるさくらを見てよめる
紀利貞:生年不詳、881年没。875年少内記、879年大内記、従五位下。古今和歌集にはこの歌を含めて四首が採られている。
あはれてふ 事をあまたに やらじとや 春におくれて ひとりさくらむ
(巻第三夏歌136)
すばらしい、との褒め言葉を、他の多くの桜に言わせないようにと、この桜は春を過ぎてから、一人咲くのでしょうか。
う月は、旧暦の4月。
時期遅れで咲いた桜があり、その桜は褒め言葉を独り占めしたいのではないか、と推測する。