248/289
ぬれつつぞ しひてをりつる 年の内に
やよひのつごもりの日あめのふりけるに、ふぢの花ををりて人につかはしける
在原業平
ぬれつつぞ しひてをりつる 年の内に 春はいくかも あらじと思へば
(巻第二春歌下133)
三月の晦日、雨が降っていたので、藤の花を折り取り、人に贈った歌。
雨に濡れてはいたのですが、あえて藤の花を折りました。
この年の内には、春は何日も残っていないと思いましたので。
送った相手は、当然、意中の女性。
おそらく、逢瀬の前の「知らせ」
雨に濡れた藤の花ではあるけれど、今年の春の名残の藤。
その風情を一緒に味わいとの気持ちである。