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吹く風と 谷の水とし なかりせば
寛平の御時のきさいの宮の歌合のうた
紀貫之
吹く風と 谷の水とし なかりせば み山がくれの 花を見ましや
(巻第二春歌下118)
寛平の御時の后の宮の歌合につかわれた歌
吹いて来る風と、谷に流れる水がなかったならば、山の中に咲く花を見ることができたでしょうか。
深い山に風が吹き、花を散らす。
その花は、谷を流れる川の水に乗り流れて来る。
深い山であっても、花は咲く。
それを知らしめたのは、風と川の水。
それを思えば、花を散らす風を恨むだけではよくない、そんな意味なのかもしれない。




