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霞立つ 春の山べは とほけれど
在原元方
霞立つ 春の山べは とほけれど 吹きくる風は 花のかぞする
(巻第二春歌下103)
霞が立っている、春の山辺までは遠いのですが、吹いて来る風の中に、花の香りが含まれているのです。
現実には、春霞に覆われて、花を見ることも出来ず、吹いて来る風に香りを含ませるほど、強い香りが花にあるわけではない。
しかし、春霞の中に見えない花を思い浮かべ、山辺から吹いて来る風にも、きっと花の香りが含まれていると思う。
全ては空想の歌になるけれど、わかりやすく愛される歌と思う。




