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春の色の いたりいたらぬ さとはあらじ
よみ人しらず
春の色の いたりいたらぬ さとはあらじ さけるさかざる 花の見ゆらむ
(巻第二春歌下93)
春の気配が訪れる里とか、訪れない里とかの、区別などはないと思うのです。
しかし、なぜ、花は咲いたり、咲かなかったりするのでしょうか。
自然界のことなので、春になり咲く花と、咲かない花もある。
ただ、それだけではない歌と思う。
普通に春を喜ぶ人と、何らかの事情のため、春を喜ぶまでにいたらない、喜べない人もいるのではないか。
自然界も一様でなければ、人間も一様ではない。