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花の色は かすみにこめて 見せずとも
はるのうたとてよめる
良岑宗貞
※良岑宗貞:遍照の(出家前)の名前。
花の色は かすみにこめて 見せずとも かをだにぬすめ 春の山かぜ
(巻第二春歌下91)
春の歌として詠んだ歌
美しい花の色は霞に閉じ込めて見せてくれないとしても、春の山から吹いて来る風は、せめてその香りだけでも、盗み出してきてくれないだろうか。
花の色は、霞に遮られて見ることができないのだから、春の風に、せめて香りだけでも盗み出して来て欲しい、と頼んでいる。