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ごとならば さかずやあらぬ さくら花
さくらの花のちりけるをよみける
紀貫之
ごとならば さかずやあらぬ さくら花 見る我さへに しづ心なし
(巻第二春歌下82)
※しづ心なし:静心なし。心が落ちつかない。
桜の花が散ってしまったのを詠んだ歌。
こんなことなら、桜の花は咲かないほうがよいのではないか。
散ってしまう姿を見ている私までが、心が落ちつかないのだから。
人間とは勝手なもので、そう詠んだとしても、桜の開花を待ち望む。
そして、桜が自然の摂理で散る、ということを頭では理解していても、惜しくて仕方がないのである。




