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空蝉の 世にもにたるか 花ざくら
よみびとしらず
空蝉の 世にもにたるか 花ざくら さくと見しまに かつちりにけり
(巻第二春歌下73)
※空蝉:現身から転じた言葉。「世」にかかる枕詞。平安期には「はかない」「むなしい」の意味を持った。
空しいこの世に似たのでしょうか。
桜の花も、咲いたと思って見ている目の前で、ハラハラと散って行くのです。
桜の花の散る様子と、仏教の無常観を重ねたと思われる。
酷暑や霜雪に耐え、ようやく咲いたと思ったら、あっけなく散って行く。
作者も、桜の花が散る様子に、自分の人生の無常や辛さを重ねたのかもしれない。