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見る人も なき山ざとの さくら花
亭子院の歌合の時よめる
※亭子院の歌合:延喜13年(913)3月13日宇多上皇主催。
伊勢
見る人も なき山ざとの さくら花 ほかのちりなむ のちぞさかまし
(巻第一春歌上68)
見る人などいない、山里の桜の花は、他の場所の桜の花が散ってから、咲いたらいいと思うのです。
そうすれば、桜をより長く愛でることができる、ということなのか。
あるいは、山里で人に見てもらえず、咲いて散ってしまう桜の花を、惜しむ、あるいは可哀想に思ったのか。
おそらく、そんな意味がこめられていると思う。




