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やまざくら わが見にくれば 春霞
よみびとしらず
やまざくら わが見にくれば 春霞 峰にもをにも たちかくしつつ
(巻第一春歌上51)
※「を」は、山のすそ。
山桜を愛でようと出向いて来たのですが、春霞が峰からふもとにかけて一面にたちこめております。
まるで、桜を隠すかのように。
桜が咲く時期は、春霞が多く立つ時期。
作者は、山桜を期待してのぼって来たけれど、残念ながら見ることはかなわなかった。
しかし、霞が一面に立ち込めるのも、また春の風物詩。
これはこれで、絵画的な美しさを持つ。




