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山たかみ 人もすさめぬ さくら花
よみびとしらず
山たかみ 人もすさめぬ さくら花 いたくなわびそ 我見はやさむ
(巻第一春歌上50)
山の高い、人里離れた場所に咲いていて、世間の人が見ることもなく、愛でることもない桜の花。
あなたは、ひどく落ち込まないでいいよ。
私が、しっかりと見て楽しむから。
美しく咲いたところで、咲いた場所が、人里離れた、高い山の上。
だから、わざわざ見に来る人もいない。
作者は、それでも「そんなに、めげないでね」「私がしっかりと見て楽しむよ」と、やさしい声をかけて、桜の木を慰める。
なかなか、やさしい心を感じる歌である。
 




