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梅がかを 袖にうつして とどめてば
寛平の御時きさいの宮の歌合のうた
よみびとしらず
梅がかを 袖にうつして とどめてば 春はすぐとも かたみならまし
(巻第一春歌上46)
※梅がか:梅の花の香り。
※かたみ:形見。人や物をしのぶもの。
寛平の御時后宮(七条后温子)の歌合につかわれた歌。
梅の素晴らしい香りを袖に移して残して置けるものならば、春が過ぎ去ったとしても、春を偲ぶ形見になるのでしょうが。
春が過ぎても、できれば梅の香りを袖に残し、春を楽しみ続けたいと願う。
そんな梅の芳香への強い思いが感じられる。




