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色よりも かこそあはれと おもほゆれ
よみびとしらず
色よりも かこそあはれと おもほゆれ たが袖ふれし やどの梅ぞも
(巻第一春歌上33)
その色よりも、香りのほうこそ、素晴らしいと思うのです。
いったい、誰が袖を触れて、その香りを移した宿の梅なのでしょうか。
あまりにも梅の香りが素晴らしいので、誰かの袖の移り香によるものと、見立てている。
香りの文化が発達していることが背景にある、との分析もできる。
実際には目の前では、梅の花を見てはいない。
しかし、袖に残った香りを喜び、そのほうが素晴らしいと感じる。
「余情」の表現の一つとも、思う。




