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みやまには 松の雪だに きえなくに
よみびとしらず
みやまには 松の雪だに きえなくに 宮こはのべの わかなつみけり
(巻第一春歌上19)
※みやま:奥山、深山。
深い山里では、いまだに松の雪も消えず残っているというのに、都では野辺の若菜を摘んで遊んでいる。
寒く深い山里から都に出向いて来て、春の若菜摘みをしている人を見て、驚いたのか、あるいはうらやましいと思ったのか。
京の都近くに住んでいるとはいえ、作者の家は、まだ寒い冬を耐えている。
しかし、都に出て来れば、暖かい春で、しかも若菜摘みをして遊んでいる。
うらやましくなるのも、当たり前である。




