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うぐひすの 谷よりいづる こゑなくば
大江千里
うぐひすの 谷よりいづる こゑなくば 春くることを たれかしらまし
(巻第一春歌上14)
ウグイスが谷から出て来て、鳴く声がしないならば、春が来ることを、誰が知ることができるのでしょうか。
春告鳥としてのウグイスを詠んだ歌。
ウグイスが飛んで来て鳴いて、ようやく春が来たと、世間が認める。
しかし、今は鳴いていないのだから、春らしくなって来たとは言え、春ではないの意味だろうか。
目で見る春、肌で感じる春、耳で確認する春があるようだ。




