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けぬがうへに 又もふりしけ 春霞
よみびとしらず
けぬがうへに 又もふりしけ 春霞 たちなばみ雪 まれにこそ見め
(巻第六冬歌333)
消えず残っている上に、再び降り積もって欲しい。
春霞が立つ時期になれば、雪など滅多しか見られなくなるのだから。
本来は寒い冬より、暖かい春を待つ。
しかし、この作者は雪景色が好きなようで、解ける前に、また降り積もって欲しいと願う。
今目の前にする美しさが消えないで欲しい。
しかし、季節は、世間は無常に移り行く。
作者も無理とわかっているけれど、執着を示す。
これも、執着を捨てきれない人間らしい歌と思う。




