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藤衣 はつるる糸は わび人の
父が思ひにてよめる
※思ひ:服喪。親の場合は一年。
壬生忠岑
藤衣 はつるる糸は わび人の 涙の玉の 緒とぞなりける
(巻第十六哀傷歌841)
※藤衣:喪服。本来は藤や葛で織った粗末な服。薄墨色に染めて着用した。
※はつるる:ほつれる。
※玉の緒:珠を貫く紐。
父の喪中に詠んだ
藤衣の糸がほつれてしまい、悲しみに沈む私の涙の玉の緒となっております。
喪服がほつれて、そのほつれた糸に、父を失い落胆する作者の涙が落ちて珠のようになっている状態を詠む。




