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神奈月 時雨に濡るる もみぢ葉は
母が思ひにて詠める
※思ひ:喪。親の喪は一年。
凡河内躬恒
神奈月 時雨に濡るる もみぢ葉は ただわび人の 袂なりけり
(巻第十六哀傷歌840)
※神奈月:旧暦10月
※ただ:まさしく
※わび人:失意の人、落ち込んだ人。この歌では作者本人。
神奈月の時雨に濡れる紅葉の葉は、まさしく嘆き失意の私の袂なのです。
あまりの悲しさに、自分の心も血を流し、真っ赤に染まり、それが涙となり、拭う袂も濡れている。
血涙を流し、母の死を悼む。
なかなか激しい表現と思う。




