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みなせ川 ありて行く水 なくはこそ
よみびとしらず
みなせ川 ありて行く水 なくはこそ つひに我が身を 絶えぬと思はめ
(巻第十五恋歌五793)
※みなせ川:地表では水がなく、伏流水。水無瀬川。
水無瀬川のように、目立たぬように隠れて地中を流れる川があるけれど、その川に水が無ければ流れようがありません。
そのように、私も水を流すような望みが失せたなら、この身も終わりと思うのでしょうか。
恋人への思いを秘め続けてはいるけれど、どうしても、その思いが届かないとわかってしまったなら、生きている意味がない、この身も終わりと考えてしまう。
愛を誓い合ったとしても、人の心はいつの間にか変わる。
特に、秘めた恋、秘めなければならない恋の場合は、相手の自分に対する気持ちがなくなれば、それでほぼ終わり。
そんな切なさを詠んだ歌と解釈した。




