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水の泡の 消えでうき身と 言ひながら
紀友則
水の泡の 消えでうき身と 言ひながら 流れてもなほ たのまるるかな
(巻第十五恋歌五792)
※水の泡:はかないものの表現。
※消えで:消えずに。
※うき:「浮き」と「憂き」を掛ける。
水の泡のように、はかなく消えてしまうこともできずに、ただ浮かんでいるだけの憂鬱な我が身ではありますが、単なる泡として押し流されても、まだあの人の気持ちを期待してしまうのです。
絶望的な関係ながら、生きていれば万が一、逢瀬ができるかもしれない。
そんな諦めきれない思いを詠む。




