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冬枯れの 野辺を我が身と 思ひせば
物思ひけるころ、ものにまかりける道に野火のもえけるを見てよめる
伊勢
冬枯れの 野辺を我が身と 思ひせば もえても春を 待たましものを
(巻第十五恋歌五791)
恋の思いに悩んでいる頃、ある場所にでかける道すがら、野火が燃えているのを見て詠んだ。
冬枯れとなってしまった野辺を我が身と思えるなら、燃えてしまっても次の春を待とうと思うのです。
伊勢にとって冬枯れは、愛人に捨てられた我が身。
見込みのない恋心は、野火で燃やしてしまって、次の春(恋)を待ちたいと詠む。
ただ、そうしたいと願うだけで、それがままならない思いがあるのだと思う。




