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月夜には 来ぬ人待たる かきくもり
よみびとしらず
月夜には 来ぬ人待たる かきくもり 雨も降らなむ わびつつも寝む
(巻第十五恋歌五775)
月夜には、来ないとわかっている人でも、つい待ってしまうのです。
どうせなら、空が一面真っ暗に曇って、雨を降らしてくれないでしょうか。
そうすれば、諦めがついて、わびしいと思いながらも寝ることができますのに。
恋人の夜離れが続けば、名月の夜とて、恨めしい。
いっそのこと、雨でも降ってくれれば、来ないとわかるので諦めがつく。
寂しいことには変わらないけれど、何とか眠ることはできる。
なかなか自分勝手な歌と思うけれど、それが恋の特質なのかもしれない。




