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今はこじと 思ふものから 忘れつつ
よみびとしらず
今はこじと 思ふものから 忘れつつ 待たるることの まだもやまぬか
(巻第十五恋歌五774)
今のような関係になればもう来られないでしょう、と思いながらも、それを忘れてしまうのです。
そして、おろかにも待ち続けてしまう、そんな悪い癖がなかなか治らないのです。
おそらく別れを切り出された相手、自分も思いを断ち切ったはずの相手なのに、そんなことをいつの間にか忘れてしまい、性懲りもなく待ち続けてしまう、そんな悪癖を自嘲している。
男女の別れの難しさ詠む名歌と思う。




