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恋ふれども あふ夜のなきは 忘れ草
よみびとしらず
恋ふれども あふ夜のなきは 忘れ草 夢路にさへや 生ひしげるらむ
(巻第十五恋歌五767)
これほど恋慕っているのに、逢える夜がない理由は、夢路にまで忘れ草が生い茂っているからなのでしょうか。
現実の世界だけではなく、夢路にも忘れ草が生い茂ってしまった。
そのため、恋慕う相手が、自分のことを忘れてしまって、逢いに来る夜は皆無となってしまったと想像する。
自分が見捨てられた理由を忘れ草のせいにする。
そうでもしないと、辛くてたまらないのだろうか。
待つだけ女の苦しい思いを詠んだ歌と思う。




