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我が袖に まだき時雨の 降りぬるは
よみびとしらず
我が袖に まだき時雨の 降りぬるは 君が心に 秋や来ぬらむ
(巻第十五恋歌五763)
※まだき:まだその時期ではないのに。早くも。
※秋:「飽き」の掛詞。
私の袖に早くも時雨が降りかかったのは、あなたの心に秋(飽き)が来てしまったからなのでしょうか。
待つ女の袖にかかったのは、本物の時雨ではなく、女自身の涙。
男の夜離れが続いているらしい、だから飽きられてしまったと嘆く。
ただ、夜這いをする男にとっても、寒い時期は苦難の時期。
女と共寝をするのはいいけれど、夜明け前に女の家を出るのが決まり。
寒い朝など、どうしても辛いのである。




