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秋の夜も 名のみなりけり あふと言へば
小野小町
秋の夜も 名のみなりけり あふと言へば ことぞともなく 明けぬるものを
(巻第十三恋歌三635)
※名:評判(噂)、通念。
※ことぞともなく:あっけなく、たいしたこともなく。
秋の夜が長いなど、噂だけのことでした。
実際に逢ってみると、呆れるほど早く、何ということもなく、夜が明けてしまうのですから。
万葉集巻10-2303に参考となる歌がある。
秋の夜を 長しといへども 積もりにし 恋を尽くせば 短くありけり
(秋の夜は長いといわれております 積もりに積もった恋心を尽くしますと、短くなってしまうのです)
やはり楽しい時間は、あっと言う間に過ぎ去る。
絶世の美女と言われた小野小町に、そんな歌を詠ませたのは、どんな素晴らしい男性か、気になってしまう。




