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しのぶれど 恋しき時は あしひきの
紀貫之
しのぶれど 恋しき時は あしひきの 山より月の いでてこそくれ
(巻第十三恋歌三633)
世間には知られないようにと思いを心に秘めてはいます。
しかし、それでも恋しくてたまらない時は、山から月が出るように、家から出てきてしまうのです。
恋の歌として、完璧で教科書のような名歌。
恋する気持ちは、我慢しようとしても、とても我慢できない。
どうしても溢れ出てきてしまうことを、山から月が出てくる光景に例えている。
さすが、貫之と言ったところだろうか。




