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英雄の瞳

場面がいまいちです。

短いです……。すいません。

 空高くを白い鳥が飛んでいた。

 雨はいつの間にか止み、空を自由に飛び回る鳥は世界の亀裂を見ながら、その一部始終をゆっくりと見た。

 穢れた大地も全てを否定する力も……そしてそれを止める英雄姫の姿も。




「ベガ……ちゃん?」


 亀裂走る異様を見るのは馬上で金髪をなびかせる英雄姫、メル。


「……」


 俯き左目をノイズに覆われる少女は何も反応を示さないまま虚ろに佇むベガ。


「っ!」


 今も戦い続けているのは黒い鎧を身に纏うソルムード騎士団の団長アガレス。


 三者が揃い、戦場は更なる混乱を招くことになると思われたが……。


「なるほど……君が英雄姫か」

「?」


 一目見てアガレスはメルの存在を感じ取った。

 彼女が正しく英雄姫のメルであると、それと同時に敵意も抱くのであったが。


「……道は私たちで作る。あれは君の友達なのだろう?」

「隊長?!」


 隊員が驚きの声を上げる。

 今も現在も英雄姫メルは敵であるのだ。それでも彼がこの選択をしたのは自分たちだけではこの状況を変えられないと理解したから。

 敵同士であるにもかかわらずアガレスがそう提案したのはベガの首よりもソルムードの守護を主としたから。

 馬上で視線を合わせるメルとその隣を歩く彼が尋ねる。


「だってさ、メルちゃん。どうする?」

「どうするも何も、私たちだけでは止められないんですよね?」


 メルの隣でシフォンが尋ねた。

 道中、メルたちは死者たちと戦っていたのだ。そのせいで到着が遅れたのは事実であったが、それでも術についてある程度の分析はしていた。

 いや、結果は出ていた。


「エルフ族も僕も知らない術だ……。空間の亀裂が世界の崩壊を表しているとなると、とても僕たちだけでは止められないよ」


 メルにとっていま優先すべきことはベガを助けること。

 だから。


「メル殿、一先ずの共闘……お願いする」

「……」


 アガレスとメルも目的は一緒であるのだ。

 この流れは自然であるのだが。

 兎にも角にもベガを止めることに関しては一刻の猶予も無い。

 現に今も術は広がり続ける。

 雨上がりの夜空に不吉な影が大きく覆いメルの答えは。


「こちらこそ、協力お願いします」

「感謝する!」


 死者たちに囲まれながら彼らの共闘は約束された。

 背中を合わせ、隙を補い合いカバーする。

 疲れ切ったソルムード騎士団に代わり先制攻撃するのは勿論メル。


「〈聖なる光に照らされて(ライトシャイン)〉!」




 森に白光が落ち死者たちは土に返った。

 暖かい光は希望となって彼らの顔にほころびを見せる。


「流石メルちゃん」


 にこやかにシフォンは余裕のできた戦況で杖を振った。

 焔が死者たちを焼き払い続く騎士たちの剣により一先ず死者たちの波は止まる。

 余裕が出来、現状打破を望む彼らと笑い続けるベガに一呼吸の間が出来た。


「さて、ここからどうするかが問題だ」

「そうだね。一応聞いておくけど対策はあるのかい?」


 シフォンはダメもとでアガレスに聞く。

 首を横に振るだけのアガレスにシフォンとメルは少し顔を顰める。

 予想通りの事でありメルは困り気味に俯く。


「だが方法が無いわけではないだろう」

「と言いますと?」

「術について詳しくは分からない。それでも根本的な部分は変わらない」


 アガレスの考えは確かに正しいものだった。

 問題はそれを実行する人物がいないこと。

 いや。


「なるほど、あれはまだ完成していないんだね?」

「ああ、そうだ。未だ拡大を続けるこの術は“未完成”だ」


 断言できたのは術の不安定さと未だに拡大を続ける二点。

 本来であれば詠唱して発動させるものであるが無詠唱で唱えたが故、その術は不安定となり本来の力を出しきれていない。

 つまるところだ。


「ベガちゃんを正気に戻すことが出来ればいいわけですね」

「その通りだよメルちゃん。加えてあの子のチートも術を不安定にさせている一因だよ」


 様々な要因が重なったことでそれは本来の術ではなかった。

 だからこそ止めることが出来る訳であるが。


「問題はベガを守る影たちだ」

「……」


 今も佇む彼らはメルたちを睨む。

 旗を持つ影や水晶を回している影など歴戦の兵がベガを守る。

 例え死者たちを退けてもこの影を突破しない限りベガを正気に戻すことはできない。拡大を続ける術は森全体から溢れソルムードまでその魔を伸ばしていた。


「作戦会議は終了か……」

「強敵も出てきたみたいだね」


 ズンと大剣が振り下ろされる。

 城から落下してきた彼は上半身を血に染め、濁った瞳とアガレスの瞳が火花を散らす。

 副官であり最もアガレスの信頼していた男、ヴァルカであった。


「あいつは俺が斬る」

「頼んだよ。ボクはあれを押さえるとしようか」


 大軍が迫る。

 ベガの召喚したスケルトンに加え参列するのは戦場で命を落とした戦士たち。

 波のように夥しい数の暴力が振るわれようとした。


「メルちゃんは――」


 シフォンはメルの様子を尋ねるように視線をメルへと向けたのだが。


「ふふ、何やら思いついたようだね」


 小さな声で英雄姫には聞こえないように呟く。

 決意と闘志が彩る瞳は迷いを捨て真っ直ぐにベガの方を向いていたのだった。


絶望感が微妙になってしまった……。

この章では世界を汚くしたかったのですが失敗でした。

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