少女は夢を見る
つたないです。
でも結構好きなシーンです。
ここは会議室であり、照らしたシャンデリアが安全な光を宿している。
ましてや、武器を所持した者など警備のため入り口を守る兵士くらいであるのだが――。
……これが貴族の戦争。
メルは今まさに、会議室にいるのに戦場に立っている気分であった。
荒れた茶色の土と死者を焼く太陽は幻であるにも関わらず、くっきりとはっきりとメルは知覚で来た。
「今さら何の用だよ。シュレインゴール卿? ここは少女の出る幕じゃないぜ?」
百戦錬磨の剣士、リングウッドは抜いた剣を――言葉をメルに向ける。
同じく言葉を――細剣を構えるのはメルであり、鋭い一突きを放つ。
「悪いですが、あなたに指揮されるのは私の戦いに反します!」
「ほぉ?」
キン!と。
簡単に言葉の剣は弾かれる。
とは言え、その後も連続で突きを放つメルにリングウッドは防戦する。
「なぜだ? 俺であれば“どんなこと”でも命令できるぞ?」
「っ! それが私と反しているのです!」
メルの意志は強い、強い故にその剣は鋭く強力になる。
砂が舞うその戦場で激しく火花は咲く。
「いえ、本音の所は違いますね。私は私を信じたあの人たちに――ベガちゃんに答えたいだけです! 私の戦争は相手を許す戦争です! あなたのように相手を否定する戦争ではありません!」
鋭い剣戟は防戦一方であるリングウッドの頬を掠める。
薄く頬から血が垂れるリングウッドにその言葉は微かだが届いたのだ。
「……あなたはなぜに戦うのですか?私は……私たちは……戦争を止めるために戦います!」
メルが行動は戦争を止めたいと言う思いが原動力。そこには確かに勝敗を付けなければならないが、それでもメルは苦しみながらも道を突き進む。
覚悟をしていた。
それは一人の少女が見る、皆の夢であるから。
「はっ! 甘い! 甘すぎる!」
全ての剣を、言葉を飲み込み。
受け止めるリングウッドはメルと鍔迫り合いをする。
「戦争とは勝てばそれでいいのだよ!」
「……っ!」
「戦争の本質を理解していない。敵を滅殺するまで剣を振るうのが俺らの王道。この闘争は止められんよ!」
「ぐっ!」
「問おう、シュレインゴール。お前にとって戦争とはなんだ? なぜ戦いは起きる?」
メルの剣は弾かれ、空中で回転し地面に刺さる。
尻餅をつきリングウッドを下から見上げるメルであるが。
既に剣先はメルに向いていた。
言葉では、貴族としてではメルはリングウッドに勝てない。
それは彼の方が貴族としての経験やカリスマがあるから。
ガチリと剣が力強く向けられた。
「答える必要はない。分かり合う必要もない。結論を言うに戦争とは憎しみと闘争で行い、繰り返されるものだからだ!」
リングウッドがどうやってこの貴族世界で生きて生きたのかメルには分からない。
だが、その憎悪に染まった瞳を見るに彼は憎しみを糧にしていたことは分かる。
そうしなければ、彼は生きていけなかったのだろう。
そうしなければ、彼はここにいなかったのだろう。
でもその生き方はメルにとって肯定しがたいものだった。
見下ろすのはリングウッド、武器を持っていないメルは丸腰のまま、されど剣を掴んだ。
「……戦争で一番つらいのは憎しみの心を持つことです。憎みますよね?恨みますよね?親しい人が殺されれば誰もが当たり前に持つ感情ですが――
――許さなければ、その心は捨てられない!」
ガチャとリングウッドの言葉の剣を力強く――血が滲むほど、握るメルはリングウッドの言葉に臆していない。
今でも真っ直ぐ地面に刺さるのはメルの持つ剣。
百熱の太陽が熱く焼いても、無機質な荒野が無意味さを伝えてもその剣は曲がらない。
「なるほど、その剣は分かった……。だが、夢見る少女では貴族は動かんよ!」
再び力を籠めようとリングウッドは殺気を飛ばす。
メルの言葉では彼の心は斬れない。メルの言葉では会議は動かない。
その事実にメルは痛みに耐える様に目をつぶるしかなかった。
とその時――。
パチン。
「「!」」
リングウッドとメルは現実に戻った。
困惑するメルたちだが視線は異音のした音源に向ける。
――戻されたと表現するのが正しいだろう。
それはたった一つの異音によって、もしくは彼女が持つチートによって。
唐突に、何の前触れもなく。
「くくく、面白そうな話しをしておったのぅ……」
会話シーンを戦闘シーンに見立てました。
ところで、
異界の欠陥魔法師という作品をご存知でしょうか?
戦闘描写が上手すぎる……。
あの描写はとてもではないですが、真似できなません。
私も結構、戦闘描写に力を入れているつもりですが魔法などの派手さで誤魔化しているのが現状です。ここまで頭の中で描けるのは本当にすごいことです……。
勿論、他のブックマーク作品も味があってとても面白いです。
どの作品も私には描けない世界と言葉があります。
本当に、移り変わる心を描写するのは難しい。




