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二人の軍将

文字数が少ないですがご了承を。

明日もう一つ投稿します。

「侵攻作戦については魔術師たちの〈ビジョン〉を使って説明する」

「……」


 ソサエクスが顎でしゃくる様に魔術師たちに指示を出す。

 無言で手を空中に出すのは領主専属の魔術師たち。

 つまりは貴族お抱えの精鋭たちで、腕に信頼がおける者たちであった。


「ふぁああ……」

「メルよ。驚きすぎじゃ」


 貴族同士の会議では珍しくないことであるが、如何せんメルが貴族会議に出たのはこれが初めてだった。

 大きな円卓に立体的なボードが置かれる。

 半透明なそれはこの国の地形と都市を映したもので簡単に説明するに地図であった。


「それでは“大規模侵攻”、別名アネス、イラッカ地方南北戦について説明します。要約するにこの作戦は二面作戦です」


 北と南に〈ビジョン〉にとって作られた駒が配置される。南の拠点をバーガル監獄、北の拠点を山道終わりにある砦ドルマン。

 この二つは現在反乱軍が持つ拠点であった。


「なるほど、決定的に進軍を……ですね」

「そうです。リングウッド様」


 鎧を着たリングウッドが静かに頷く。

 同意するのは説明している魔術師サクラス。

 作戦については分かりやすく、誰もが納得できるものだった。

 とは言え、本命の所は北方の難所である山道の占領であるわけで、軍はある程度そちらに集中する。


「北方、アネスの軍を指揮するのはソサエクス様でよろしいわけですが……」

「あら、そうね~。うふふふ」


 リリーナが薄く笑う。

 先ほども言った通りこれは北に偏ったとはいえ二面作戦であるつまり――。


「南方のイラッカ侵攻軍を誰が指揮するか……です」




 この場で挙手するものはほとんどいない。

 それはこの戦況を作ったメルに対抗すると言う意味であり、それだけ大きな手柄を立てたものがあまりいなかったことを意味する。

 だが。


「イラッカの指揮は俺がしよう」


 メルの対抗馬になるのはただ一人であった。

 肩書も家もシュレインゴールという名前にも負けず、かつそれだけの武勲を建てた男。

 第一次から始まる砦防衛戦を指揮し、この戦況を守り切った若き百戦錬磨の猛将。


「リングウッド・グランシルがイラッカ制服軍の総指揮官として最もふさわしいだろう」

「「「おおお!」」」


 歓声を上げ拍手するのは会議でも目立った気弱な青年含めて。


「叔父上、私に任命してください」

「なぜだ?」

「私であれば、決して人を許さずに戦い続けることが出来るでしょう。最後の一兵までも殺し尽くし、必ずや圧倒的勝利を手に入れて見せましょう」


 リングウッドはソサエクスの甥っ子であり、北方砦の指揮をしていた者だ。

 その指揮と戦法は敵に対して容赦がなく、最後の一兵まで殺すのが彼のやり方であった。畏怖と恐怖を 敵に植え付け、鬼の指揮官と呼ばれように敵味方から同時に恐れられる存在となった。

 しかし。


「くひひひ、真打の登場じゃな」

「ええ~!」


 副官のベガが何故か手を挙げる。勿論メルの指示ではない。

 完璧に独断で行った事でありただ巻き込まれる。


「すまないが、その椅子に最も相応しいのはメルじゃよ」

「え?!わ、私!」

「「おおお!」」


 歓声はメルを支持するものたちから湧き上がる。

 無理やり参加させられることになったメルであるが、残念ながらこの対決は避けることの出来ないことであった。

 どの道、立つつもりだったメルに後ろからベガの声がかかる。


「分かっていると思うが……」

「ええ、分かっています。リングウッドさんの戦争は”どんなことでもする”相手を許さないものです」


 好戦的な笑みを浮かべるリングウッドはこの戦を楽しんでいた。

 それに対して、メルは捕虜を取るようなリンドバルと正反対の戦い方をするわけであるが、その二人の思考が合わないのはどうしようもないこと。

 つまり。


「リングウッドさんの戦は“相手を許さない”戦い方ですから」

「かかか、それはお主の今と反するのぅ」


 席を立つメルに好戦的な笑みを浮かべるリングウッドにメルも負けないようにと、笑顔を見せる。

 ピリリと肌を刺す痛みが増し、ここは会議室から戦場へと変わった。



だましだましですいません。

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