二十貴族会議
出来レースですがご了承を。
変更します。
スレインの兄の名前をガエリオにします。
飾られた馬車が幻想的な白雪の城に入った。
厳重に警備するのは重装鎧を身に着けた大きな騎士。
あちらこちらに見える騎士と広い庭は手入れされた花たちと来客を迎える。
五月の月が大きく壮大な城とそこから延びる道を白く照らしていた。
玄関の大広間、カチャカチャとザワザワと人が立食する。
会話の内容は勿論、“二公同盟”と“大規模侵攻”についてだった。
「この前来た時とは…………」
「そうだね、この前とはずいぶんと雰囲気が違うみたいだ」
周りを見るメルとその後ろから付き従うシフォン。
前に来たときはここまで金銭に余裕があるように見えなかった。
前に来たときはここまで煌びやかに飾られていなかった。
「……」
ベガの横を執事やメイド、貴族がすれ違う。
テーブルに置いてある食事を愛で楽しむのはメルを含めてシフォンやベガも。
しばらくパーティーでは、よくある一コマを満喫するメルに一人の男がこちらに歩いてくるのを確認した。
「こんにちは、メーテル様」
「こ、こんにちは……」
派手なとは言えないが、声をかけてきたこの男の衣装はある意味目立っていた。普通であればこの場で煌びやかな衣装を着飾るのは貴族としての常識。
見せびらかせ、自分の権力をこの場で誇示するのが彼らの生き方なのだ。
けれど。
「大きく成られましたね。スレインは元気ですか?」
「え、えっと……」
その男は鎧を着る金髪の騎士様。
機能性を重視した性能の良い白い鎧と腰にある綺麗な直剣は静かに音をたてた。
困惑するメルは同時に彼を思い出そうとする。
「お久しぶりです。ガエリオ様」
視線を左上に向けるメルにシフォンは助け舟を出す。
小さく、本当に小さくメルはシフォンに確認する。
(あの方は?)
(スレインの兄、ガエリオ様です)
その言葉でやっと思い出すのはメル。
それと同時にこの兄弟は似ていないなと改めて思うのであった。
片や聖騎士の様に美男子、片や顔に傷を残す歴戦の傭兵。
「こんにちは~、メーテル様。あらあら、珍しいところで会うものですね~」
「あ、リリーナ様!お久しぶりです!」
貴族間で先に挨拶するのは位の低いものからというのが常識である。
それを考慮するとメルから挨拶するものなどほとんどいないわけで、逆に言うなれば彼らの方よりもメルの地位が高いと言える。
ともあれ。
「愚妹はそちらで迷惑をかけていないでしょうか?」
「愚妹?ああ、そういうことかのぅ」
その言葉で理解するベガは紫色の髪を持つリリーナと赤髪のレオジーナを比べる。
レオジーナと同じく、中々魅力的な体をしているがレオジーナは鎧で身を包んでいるのに対してリリー ナは際どいドレスを着て、周りの男性を誘っているのが分かる。
妖艶な大人としての魅力がリリーナにはあった。
「迷惑だなんてとんでもない!いつも頼りにしています!」
「あらあら、メルちゃんはいい子ね~。うちの子にしたいくらいに~」
タイプの違う二人であるが、メルを溺愛するのは同じであった。
よしよしと頭を撫でられるメルはその豊満な胸に飲み込まれていた。
もがくメルとリリーナに咳払いをするシフォンは話を進める。
「ゴホン。リリーナ、他の方々も来ているのかい?」
「はい、師匠。メル様の従兄ヒイロ・ゴール、シュレインゴール家と代々深いつながりのあるキルハル家も方々も来ています」
「ご苦労。それと今のメルちゃんは“メーテル・ラ・シュレインゴール”様だ」
「……分かりました。他の方々にもそう伝えます」
その言葉に対してリリーナは一瞬、母の様に深い慈愛の笑みをメルに向ける。
けれどもそれは一瞬であり、未だ胸の中でもがくメルには見えなかった。
「は、離してください!」
何とか脱出したメルはベガに隠れる様に後ろへ廻る。
警戒するメルはクスリと笑うベガに守られるわけだったが。
「そういえば、君のことは聞いていなかったね?」
「そうね、ガエリオ。私もまだ知らないわ?」
ガエリオと馴れ馴れしく呼ぶリリーナはガエリオと幼馴染の関係にある。
よって彼らの仲が良いのはそれほど不思議ではないことであるのだが、今はどうでもいいこと。
問題は――。
「我は歴史と歩むもの、ベガじゃ。初めまして……と言っておこうかのぅ」
「「……」」
二人は顔を見合わせる。ベガという名前に心当たりがないか?歴史と歩むものと言う別称に心当たりが無いか?などアイコンタクトで探る。
結論が出て、口を開くのはガエリオ。
「失礼。過分にして、心当たりはありませんので……」
「であろうな」
扇子で口元を隠すベガに彼らが丁寧に対応するのはベガの身分が測れていないから。
平民にしては豪華すぎる服装であり異文化的な赤と黒の和服、それに加え王族貴族と並ぶような綺麗な外見である彼女であるが彼女の立場はメルの参謀と言う立場に落ち着いている。
懐疑的な存在であり、その胸の中にある疑惑を持つのが貴族である彼ら。
だが、それに口を挟むのはシフォン。
「考えるだけ無駄だよ。彼女は“測れない”」
「……分かりました」
現にベガは彼らに対して心を開いていない。
つまりは答えないと言うこと。
口の中の疑惑が口から飛び出るよりも先に、会議室へつながる扉が大きく開かれた。
そこは円卓のある広い会議室であった。
天井画とシャンデリアがそれらを見下ろし、椅子と机は小さな装飾があった。
座るのは総勢40人。
その後ろで専属の魔術師が立ち控え、黒子のようにただ無言になる。
一歩後ろで助言を与えるのは副官という立場の彼ら。
主役であるのは勿論、招待された20人で今か今かと一人の男を待つ。
沈黙。
痛々しいほどの沈黙が緊張感と緊迫した状況を知らせる。
一般の人間であれば縮こまる場面であるが、彼ら貴族はこの場面でも個性を伝えた。
一人は戦闘準備を整えた白騎士のような優しい目のガエリオ、もう一人は紫色の髪を持つ魅惑的な笑みの女性リリーナ。
机の上で足を組み、太々しい態度を取る若い冒険者のような男、弱弱しく手をいじる小さな青年は視線を彷徨わせていた。
勿論、縮こまっている金髪の少女と和服の少女も忘れずに。
「遅くなって済まない」
臨と響くのは男の低い声。
この場でただ一人重役出勤を許された彼はゆっくりとした動きで大らかに――従者が引く椅子に――腰かける。
それと同時に起立する彼らは貴族としてのマナーがそうさせたのも理由としてあるが、本当の所はソサエクスが立たせた、と言ってもいいのかもしれない。
「これより二十貴族会議を始める。議題については知っての通り“二公同盟”と“大規模侵攻”についてだ」
「確認として“二公同盟”について――サクラス」
ソサエクスの副官、騎士ユンゲルに呼ばれるのは魔法使いのローブを身に着けるサクラスという男性。
杖をコツコツと鳴らしながら歩き、その間に円卓にいる貴族たちは見渡す。
彼が出ると同時に貴族は着席する。
遅れて、慌ててメルも座る。
「紹介しますは〈六景の冒険者〉青のサクラス。突然ではありますがこの場での発言をさせてもらいます」
「「「……」」」
目をつぶり静かに聞く者もいれば、胡散臭そうに面倒くさそうな目をする者もいる。その中で真面目に聞こうと言うものは金髪の少女一人であった。
「“二公同盟”はご存知の通り、中立派との同盟締結を是とする同国貴族同士の盟約です。代々的な発表はまだですが、近いうちに知らせようと思います」
未だ、王国が知らないことであるがこれが影響を及ぼすことは容易に考えられること。
とは言え。
「それで?その中立派貴族が今頃何の用だ?」
「り、リングウッド様……!」
副官の女性がリングウッドに注意するように声を荒立たせるが、彼女も自分が口を勝手に開いたことに羞 恥、罪悪を抱いておりその声は小さかった。
大胆不敵に笑い足を組み直すは先ほどの若い冒険者、もといリングウッド。
「知ったことかよ。俺は長ったらしい会議が嫌いなんでね。それで――」
「ぶ、無礼者!」
突然席を立つのはソサエクスの隣に座る貴族。
超えた体と特徴的なカツラをかぶる男は息を荒げながら鋭くリングウッドとにらみ合う。
「いくら、ソサエクス殿の甥っ子とは言えその態度は余りあるものだ!貴族としての気品のないものは今すぐ出ていけ!」
「ああん?」
ピシリと机に置いてある水飲みにひびが入る。
一色触発の雰囲気。
それを止めるのはこの会議で大きな椅子に座るもの。
パンと大きく手が鳴った。
「落ち着け、リングウッドにコモン。取りあえずは、この同盟は盟主同士の会談で決まったものだ……」
「会談?」
「極秘裏のものだ……。ここに集まった者たちが知らぬのも無理ない」
“二公同盟”は薩長同盟と同じように歴史を変えるほどの重大な同盟なのだ。それによって王国軍が降伏する可能性はあるし、何より戦力的に圧倒的優位を取ったのは言うまでもないこと。
当然であるが、王国軍が知ったのであれば全力で妨害してきただろう。
「急な盟約に皆の者が混乱するのは分かっていたことだ。とは言え、この同盟が無ければ“大規模侵攻”が行えないのも事実」
「黙して受け入れろと?」
「……」
リングウッドの言葉にソサエクスは無言で頷く。
舌打ちをして席にドカリとつくリングウッドはこの会談を知らなかったから。
反乱軍代表であるソサエクスが独断で決めたことであるが、家臣の者に相談しなかったのはある意味家臣に対する裏切りであったのだ。
「皆に言わなかったのは悪いと思う。だからこそ、私を許してほしい」
「と、とんでもない!」
席を立ち、謝罪するソサエクスに周りのものたちは慌てながらソサエクスの謝罪を止めようとするが、ソサエクスは本気であり彼らの言葉とは無視して頭を下げる。
(すごいですね……)
(そうだね。こんな公の場で迷いもなく盟主が頭を下げるのは中々出来ることじゃないよ)
ソサエクスの評価を上げるのはメルとシフォン。
一瞬騒ぎになる会議室であったが、ドンと机を大きく叩く音が木霊し静かになる。
「はあ……分かった。それと同盟についてはもういい。次の議題は“大規模侵攻”だろ?」
悪態をつきながら会議を進行させるのはリングウッド。
他の貴族たちも怯えながらリングウッドの言葉に従う。
「叔父上、作戦を聞かせてもらおうか?」
「うむ……」
突如、会議の空気が張り詰めたのが分かる。
それは貴族たちが放つ緊張感がそうさせるもので、中立派を含めた大規模な作戦がこれから発表されるから。
一大決戦。
攻守入れ替わったこの戦局でこれは大きな意味を持った。
「……そういえば、メルちゃんは発言していないね?」
「え?わ、私ですか?……」
シフォンがチラリと視線を伺うのはメル。
微笑みながら立つシフォンに対して、メルは慌てながら言葉を紡ぐ。
「い、今は意見する場ではないので……」
「そうじゃな。“今は”な」
困った顔をするメルは椅子に深く腰掛けながら後ろにいるベガにふくれ面を見せる。
閉じた扇子を顎に添えるベガは黒髪を揺らしながら優しく微笑み返した。
誤魔化しが幾つも入っています……。
会議の続きが気になって下されば幸いです……。




