会議
ワンパターンのような気がする。
夜襲により、壊滅的被害を受けた監獄はそのまま占拠された。
千人体制で守っていた監獄はその半数が死に、捉えられていた千人の反逆者を解放した。
戦後処理は厄介を極め、捉えた兵下たちは取りあえず牢に放り込み、その後の会議に出席するため監獄の廊下を歩くのはメルとベガだ。
「ワイバーンによる空挺降下というものじゃ。〈スペース〉の魔法がかかったカバンに無生物の〈スケルトン〉を数十体積むことでそのまま降下させると言う強襲戦術じゃよ」
「なるほど……ベガちゃんはすごい作戦を立てますね……」
呟くメルは感心している。
それに対して苦く答えるのはベガだ。
「何、我はただ真似しただけじゃよ。それにこの作戦には弱点がある」
とはいってもそれの弱点は現実の空挺降下と同じだ。
それに加えて〈スペース〉の魔法がかかったカバンを大量に消費すると言う点もある。
便利道具であり、兵の進行速度を上げるそれを消費すると言うのは一長一短であり、悩ましいものであった。
「それよりも、準備はできておろうな」
「はい、会議室に集まっていただいたのは反逆罪で捕まった商人と貴族、それから冒険者の皆様方です」
廊下は松明の炎で明るく照らされ、湿った空気と古臭いカビの匂いが漂う。
コツンコツンと廊下を歩く音が木霊する。
「会議の流れは理解しておるな?」
「現状説明、その後に“交渉”ですね」
コクリと頷くベガ。
そしてここからが重要なことだ。
「流れだけは決めさせてもらったが、後のことはメルに任せるのじゃ」
「……初めの……実践ですね。……目標はどれくらいですか?」
「かかか。難しく考える必要はない。少しでもこちらが有利になればそれで十分じゃよ」
軽く笑うのはベガだ。それはメルの緊張を和らげるための一言。
実際彼らをどう使うかはメルに任せているのだ。
「ヘイトを買うのは我がやろう。その後は好きにしてもいいぞ?」
そう断言するベガはいつものように明るく振る舞うのであった。
血生臭い部屋に連れてこられたのは三人の男たち。
不安に駆られながらも、片づけられていない会議室で待つ。
「遅いですな~」
「戦利品の整理に時間がかかっているのだろう」
「暇ですね」
商人代表、ヴァリエルと貴族代表オリエスタ、Aランク冒険者のクゼンだ。
それぞれ反逆罪という名目で捕まっていた者たちでその職業、階級の代表としてここに集められた。
現在の彼らの服装はその立場に相応しい恰好をしており、ヴァリエルは茶髪で藍色の瞳、胸には羽の付いたペン。
オリエスタは金髪、青い瞳と口元にある無精ひげが特徴であり生真面目な性格なのか髪は今しがた洗ったかのように整えられていた。
クゼンはそのまま優男のような風貌であり、灰色の髪と優しい青色の瞳がポイントだ。今は武器を持っていないがそれでも細い体には無駄な肉などついてはいなかった。
「それよりも、これからどうするつもりなのだ?」
小さく尋ねるのは商人のヴァリエル。
藍色の瞳が鋭くオリエスタを見る。
鼻を鳴らし、不機嫌に答える。
「……普通に考えて捕虜の扱いは本拠地への輸送。もしくはそのまま義勇兵として戦う。まあ、私たち貴族は指揮官としての引き抜きだろう」
「私たち冒険者だとこのまま義勇兵としての参戦が濃厚ですね」
オリエスタは暗雲な気持ちでこれからのことを答える。
クゼンはため息をつきながらも憂鬱そうにする。
陰鬱な雰囲気の中、最も肩を落とすのは商人だ。
「私たちも――そのまま前線送りだろうな」
「捕虜を養う余裕はないようですしね」
「問題は勝つか……だ」
苦く笑う貴族はその先の未来に期待を持てないようだ。
不思議そうにするのは冒険者のクゼンと商人のヴァリエル。
「知らないのか?今、グッテンバルグは難民によって戦費不足にあると言うことをだ」
「戦費不足って……」
「ああ、このままいけば敗北は確定だろう」
暖炉にある炎がパチリと弾ける。
つまり彼らは詰んでいると言うことだ。
うろたえるのは当然商人のヴァリエル。
「で、ですが、このバーガル監獄を落したと言うことはそれだけ大軍があると言う意味で――」
「確かに監獄を落したのはすごいことだ。だがそれによって一体何人もの兵が死んだんだ?」
残念ながら、ベガの作戦でその犠牲は少ないものであるのだが彼らはそれを知らない。
そして、この砦に滞在する兵士の数が少ないお蔭でその勘違いは確実なものとなる。
故にそう判断する。
「反乱軍の最後の抵抗だろう。安全なところはないのか」
「ないだろうね。それが戦争だからな……」
「怖いものですね」
薪が弾け、足音が近づいてくる。
「さて、どうなることやら……」
オリエスタが呟くと同時であった。
建付けの悪い扉が悲鳴を上げながら開いた。
備え付けの扉は確かに重く開かれる。
廊下の冷気がそのまま流れ、湿った石の匂いが漂う。
扉から現れたのは――
「かかか!我は英雄姫メルの参謀兼懐刀のベガじゃ!」
「ちょ、ちょっとベガちゃん!」
二人の少女。
その顔は整っており、その美貌よりも今のオリエスタたちはその年齢に驚く。
何かの間違えだろうか?
周りの兵士たちの反応を見るオリエスタたち。
兵士たちは動じていない。つまり彼女たちがこの騎士団の上官。
いち早く立ち直ったオリエスタが尋ねる。
「ほ、本当にあんたたちが俺たちを助けたのか?」
「かかか。そうじゃよ、メルがお主たちを助けたのじゃ」
「いや、どう見ても子供だろう?」
反論するのは勿論だ。自分たちを救ってくれたのがまさかの少女であったからだ。信じられないと言っても無理はない。
「何を言うておるのじゃ?メルよ。お主は何歳じゃ?」
「えっと15歳です」
「ほれ、大人じゃろ?」
「確かに大人だが、それでも幼すぎるだろう!」
突っ込むのはオリエスタだ。
異世界の設定でよく使われる成人設定、その設定は15歳だ。
今年成人したメルは大人ではあるがそれでも指揮官としては幼すぎる。
「と、取りあえず会議を始めませんか?」
いきなりグダグダするする会議。
立ち上がっていた彼らは咳払いをしてから席へと座った。
ゆっくりとした一日を書きたいけど……戦争中だから書けない。




