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焔竜退治Ⅲ

そろそろ、この一章が終わります。

映画で見たようなシーンが多いですがご了承を。

まあ、そこまで迫力が無いので気付かない人が多くいると思います。

 目をつぶるメル。

 口を大きく開けた焔竜がじかに迫っていた。

 諦めかけたメルは来るであろう痛みに恐怖しながら、ワイバーンを飛ばしていた。

 だが――


「〈ファイヤーボール〉」!」


 メルの横を通り過ぎる魔法は焔竜の口の中を焼く。

 前方から放たれたであろうそれは――


「メル様!」


 出口で待つ騎士団たちであった。

 飛び込んでくる希望の光にメルは目を開ける。


 グラグラと氷柱が揺れていた。


「ベガちゃん!」

「了解じゃ!」


 ベガはワイバーンとメルに印をつける。

 ボロボロになりながら、必死に飛ぶのは焔竜。

 いくつもの雪玉により、飛行速度と高度は落ちていた。


 地面を滑空する焔竜。

 高度が少しばかり高いワイバーンから焔竜を見下ろすように呟いた。


「残念じゃが、お主の歩む歴史はここで終まいじゃ」


 怒り狂う焔竜はベガに噛みつこうとその首を伸ばす。

 赤い息吹を吐くその口は牙が折れている。けれどもその迫力は衰えるどころか、さらに迫力を増す。

 口の奥から炎が蠢く、その咢がベガたちを捉えようとした瞬間――


「〈転移系召喚術〉」


 ドラゴンが口を閉じるのと同時であった。

 谷に引っかかった氷柱が落ちるのは。




 転移すると同時にメルたちワイバーンは雪原へと不時着する。

 バフンと投げ出されたメルはそのまま新雪を転がり落ちた。


「大丈夫かメル?」


 青空を見上げるメルにベガが近寄る。

 息を乱すメルであるが、彼女の胸の内は喜びでいっぱいであった。


「やった……やったよベガ――「グアアア!」」


 響くのは断末魔に近い苦しみの声。

 だが、その命はまだ散ってはいなかった。


 雪の中から吐き出される炎はその存在を明確にする。

 周りの温度が一度高くなる。

 氷柱が刺さった痛々しい体であるが、その瞳に死を窺わせる色は無い。

 瀕死の状態であるのは誰が見ても明らか、手負いの獣の焔竜はそれでも魔物の王者に相応しい佇まいであった。


「そんな……」


 絶望的な状況。

 緊張の糸が限界にきたせいか倒れるメル。それを支えるのはベガだ。


「メルは休んでおれ、後は――」


 魔法と矢の雨が焔竜に襲い掛かる。

 被弾する焔竜は苦しそうにその新たな敵を見る。


 小さな。あまりにも小さくて矮小な存在。

 100しかいないそれは今も焔竜に刃を向けている。


 ふざけるな!と焔竜は思う。ただの人間風情がこの焔竜に敵うわけがないと焼き殺してやろうと。


 手負いであるが、それでも今の焔竜はその怒りによって力がわく。

 雄叫びを上げるのは焔竜。

 羽は千切れており、その四肢も刺さった氷柱によって上手くは動かないがそれでも、下等種くらいならば焼き殺せるそう思っている焔竜は一人の魔術師を見る。

 先頭を歩く彼は他の者と比べはるかに小さな存在。

 けれども――


「さあ、あとは僕たちの出番だよ」


 そう呟くシフォンは巨大な魔法陣を発現させた。




「すう、すう」


 寝息を立てるメルはいつものテントで寝ている。

 ハーフエルフたちの里に戻ったメルたちだが、その時間は夕暮れを過ぎた時間。

 報告は翌日とする旨を伝えたメルはこれまでの疲労の所為か、眠ってしまった。


 外では騒がしく、兵士が騒いでいる。


 その中に入れないベガはただ、メルの容態を見守るのであった。


「何をしているのですか?」


 レオジーナが看病のためかテントに入ってくる。

 空中で何かを操作していたベガはそのまま“メニュー画面”を閉じた。


「なに、ちょっとした確認じゃよ」


 答えるベガはそのまま、椅子に座る。

 住居として利用できるように組み立てられたそれであるが、簡易的な机や椅子は備え付けてあった。


「このたびはありがとうございます……」

「何、結局のところ犠牲者はゼロとはいかなかったんじゃ。感謝されるいわれはないぞ」


 ベガのたてた作戦は確かにうまくいった。

 けれども、瀕死の状態の焔竜が思っていたよりも手ごわかったために犠牲者は出た。


「たったの五人です」

「いや、五人もじゃよ」


 そう笑うベガであるが、為政者と見たのならばその数字は小さく見えるだろう。けれども知り合いが同時に五人も死んだとなるとその数は大きいと見るべきだ。


「メルはきっと我を責めるじゃろうな」


 そう呟くベガであるが、その言葉は否定される。


「メル様は……そんなに弱い人間ではありません」


 答えるのはレオジーナだ。

 普段、ベガを敵視しているレオジーナであるがこの時ばかしは感謝をしている。そして同時に思うのは主君に対しての敬愛の念だ。


「シャラン様が亡くなったあの日から、メル様は強くたくましくなられた。出来ないことでも一生懸命に取り組み、それでもあきらめないメル様だ。他人のせいにするほどメル様は浅ましくも、卑しい人間でもない」


 そう断言するレオジーナの瞳には怒りの炎が灯っていた。

 それは主君を馬鹿にされた、軽く見られたが湯に示した反応。

 条件反射に近く突発的に発した言葉であった。


「……」

「……」


 沈黙が木霊する。

 レオジーナとしてもそれはベガを励ますために発したのが理由であり、大半を占めているものだ。

 けれども敬愛する主君を馬鹿にされたことにより少し短慮になってしまったのは否めない。


「「ぷっ」」


 吹き出すのは二人。

 それはいい歳子いた大人が喧嘩した子供のように黙り込んでしまったからだ。


「くくく、確かにあのメルがそんなことを言うはずがないのじゃ」

「ふふふ、そうですよ。だから、あなたがメル様を慰めてあげてください」


 目を丸くするのはベガ。

 レオジーナはベガのことを認めたのだ。

 慰めてあげると言うのはメルの友達だと認めたと言うこと。そして同時に自分はメルの隣に立てないと自覚したと言うことなのだ。


「後のことは……頼みました」


 そう言ってレオジーナはテントの外へと出ていった。




次で、一章が終わるかも?

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