焔竜退治Ⅱ
まあ、主人公補正がかなり入りますがご了承を。
ベガは焔竜を戦力的に評価するならば、軍事用のヘリコプターと評価していた。
勿論、それよりも速く飛ぶことが出来るし、機関銃やミサイルが無いものの、それでもブレス攻撃は破壊や殺人に特化していると言えるだろう。
「メルよ!ワイバーンは小さく、焔竜よりも小回りが利く。その利点を生かせ!」
「はい!」
焔竜はこちらを視認する。
ここは雪山で、下にいる兵士たちは視認性を下げるため、白いマントを被って行動している。それに対してワイバーンはそういったことをしていないのでいち早く見つかる。
「グオオオオ!」
轟く咆哮にメルは身をすくめるのだが――
「落ち着けメル」
ワイバーンの手綱を一緒に掴むのはベガ。
温かいベガの手がメルを包む。
「焔竜は我が見ておく。メルはワイバーンの操縦に集中じゃ」
メルはコクリと頷く。
そして攻撃を開始する。
「〈ファイヤーボール〉!」
真っ直ぐ突っ込んでくる焔竜にワイバーンの〈ファイヤーボール〉を当てる。
被弾する焔竜であるが――
「メル!上に逃げるのじゃ!」
勢いは止まらず、噛みつこうとする焔竜にワイバーンは上へと逃げる。
大きく羽を羽ばたかせ、急上昇。
間一髪、だが未だに睨んだままの焔竜はその狙いをワイバーンに絞る。
「食いついたぞ」
その一言は作戦の上で重要なことだ。
つまり第一段階は完了ということ。
『A地点準備完了しました』
それと同時に魔伝から通信が入る。
残りは二か所で、それまでメルたちが時間稼ぎをする。
「メルよ。全速力じゃ!」
「はい!」
トップスピードで逃げる。それを追いかけるのは焔竜だ。
「右!」
ワイバーンを右に傾ける。
その左を焔竜の頭が通る。食らおうとする焔竜は精一杯首を伸ばし、噛みつくがそれは空を切る。
右左とよけるワイバーンであるが、そのスピード差はない。
そして吹くのは突然の突風。体制が崩れるワイバーンは風に流され、急旋回。
けれども、焔竜はその重さ故、風の影響は少ない。そのまま通り過ぎる様にギリギリを通る。
「ふう、風に助けられました」
ワイバーンの体制を立て直し、そう呟くメルに疲労の色が見える。
ここは高山地帯で酸素が薄い。動いていないとはいえ、疲労はかなり溜まっている。
『C地点!準備完了です!』
そして入った最後の通信。
再び気を引き締める。
「ブレスじゃ!」
下に急下降するメル。
かなりの広範囲を焼き尽くすそれはまるで天を焦がすかのように吐き出す。
「グルアアアア!!!」
「かなり怒っているようじゃ」
「はあ、はあ、かなり逃げ回っていますからね……私たち」
どれほどの時間が経ったのかメルには判断できない。
肩を通り過ぎる雪景色。
一瞬一瞬が命がけで長く感じる。
「メル!ここじゃ!」
低空飛行をしているメルは『竜鳴きの谷』へと入る。
その狭い谷に入るのはワイバーンだけではなかった。
「ギャオオオ!」
焔竜がギリギリ通れたのだ。
地面、擦れ擦れを飛ぶワイバーン。その上空を焔竜が陣取る。
逃げ場はなく絶体絶命のピンチであるが――
「すーーーっ」
深呼吸をして、メルは魔伝に向かって叫ぶ。
『今です!』
ゴゴっと何かが蠢く音がした。
ここは狭い谷であった。
そして雪が降り積もるほど寒い場所。
その雪の量は多く、谷の上に雪庇を作る。
そう、雪庇を作るのである。
ゴゴっと蠢くのは彼らで雪崩を起こしたから。
振動する世界はワイバーンに乗るメルでも感じられるほど。
そして振動して落ちるのは“雪庇”という名の巨大な雪玉だ。
「ギャオン!」
その巨大な雪玉は焔竜に当たる。
巨体であるが故、それが当たるのは必然。
だが小さなワイバーンなら――
「左じゃ!」
「はい!」
よけることはできる。
全神経を集中させながら、メルはベガの指示に従いよける。
いくつも降る雪玉はそれなりの質量で焔竜を攻撃し、その速度を徐々に削る。
前方に集中するメル。
右左と行く手を阻む雪玉をよけ――
落ちてくるのは巨大な氷柱だ。
まるで、竜の牙のようにとがったそれは咢を閉じようとしているかのように見える。
出口付近にあるそれはその巨大さと長さ故、まだ谷に引っかかっている状態だが、雪の重みに軋みを上げている。
雪玉は降ってくる。
「飛ばすよ。ベガちゃん!」
最後の力を振り絞り、再加速するのはワイバーン。
このままいけば、間に合う距離であるが――
「ギャオオオ!」
諦めていない焔竜は雄叫びを上げる。
その叫びは氷柱にひびを入れた。
小さな雪がパラパラと岩肌を削るように降る。
「まずいぞメル!」
後方では焔竜がなりふり構わずメルたちを追いかける。
互いに命がけ、だがメルには仲間がいた。
雪玉に当たらないのは補正だと思って下さい。




